劇場公開日 2020年10月30日

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「のぞみ、生きてますよね?曽根さんみたいにどこかで暮らしてますよね?」罪の声 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5のぞみ、生きてますよね?曽根さんみたいにどこかで暮らしてますよね?

2020年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

かつて世を騒がせたグリコ森永事件。世間を手玉に取って、警察を嘲笑し、マスコミを翻弄し、結局迷宮入り。死人が出たわけでもないので、世人はこの事件をどこか面白がっていたのは、幼いながらもよく覚えている。金を手にすることもなく、目的もよくわからない、うやむやな事件だと思っていたが、なるほどこういう推理が成り立てば、むべなるかな。だけど、その背景には、苦しんだ人間もいた、というわけか。そう、世間には知られずに、ね。そのプロットの組み立てが見事。

「俺は・・・」と曽根は、総一郎が独白している姿を見ながら、彼と自分の人生を比べた。事件の関係者の、あれからずっと引きずってきた不遇。自分だけ幸せな人生を過ごしてきた罪の意識。その突然沸き起こった感情に押しつぶされそうになりながら、世間の裏街道を生きてきた総一郎との対比が辛い。ほかの幾人もの登場人物もしっかりと描き切り、その思惑も明確に見せて来た時点で、この映画の完成度は高い。
役者は一流をずらり。なによりも、総一郎役の宇野祥平の演技には目を見張った。はじめ、誰だ?この役者、と思ったくらいだった。ただ全体に、舞台が関西なだけに役者も関西出身で固めて欲しかった。それは、どうしてもイントネーションに違和感を感じてしまうからだ。それだけで、随分と減点となってしまう。

阿久津の上司の言葉が、マスコミとしての矜持。「俺らの仕事は素数分解みたいなもんやな。素数になるまで割り切って割り切って。」

栗太郎