劇場公開日 2020年7月31日

「SNSのPV数を稼ぐことがよいとされる虚構の時代に、本当の価値を見出す。」#ハンド全力 teppeki 77さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0SNSのPV数を稼ぐことがよいとされる虚構の時代に、本当の価値を見出す。

2020年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

SNSは今、ココにあるものしか価値を見出せない。
この瞬間に一気に盛り上がり、過去の記事/写真は何の価値もなくなるのがSNSの特徴。
だから、導入として過去の写真が今の写真のように扱われ、勝手に盛り上がっていく様はSNSの特徴をつかんでいると言える。
主人公たちはPV数を稼ぐ、いいねを稼ぐゲームに没頭し、ハンドボールを全力で取り組むという本質に向き合うことには価値がないと自覚的である。
この姿勢は現実にSNSで発信し、PV数を稼ぐことを目的としている人たちと同じ姿勢だ。
そういう意味で主人公たちは今の最先端のトレンドを抑えている、賢い人たちともいえる。

では観客(私たち)はこの主人公たちをみて、何か感動的になったり、共感したりするだろうか。一生懸命、真摯にハンドボールに向き合う女子、友人、ヒロインに共感するのではないだろうか。

主人公は自分の家族、友人、ヒロインとの関わりの中で徐々に何が本当に価値あることなのかを見出していく。
本当に重要で大切な人たちとは、ネット上の誰かではなく、家族やここにいる友人や近所の人たちなのだ。これはネット社会(SNS)が発達し、バラバラの個人になってしまった私たちからすれば、古臭く、気持ちの悪いことなのかもしれない。しかし同時にこの映画の主人公たちの所業を見て、価値がないと感じるように、今のSNS社会に価値がないということにも気づけるはずである。

本当に大事なこと、真実、価値のある仕事をしている人たちはSNS上にはいない。
本当の価値は自分の過去にあり、自分の周辺の人々にこそある。
何が大切で何に価値を見出すか、自分にもう一度問いただそう。

teppeki 77