劇場公開日 2020年11月13日

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「字幕を書きました」ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒 無名さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0字幕を書きました

2021年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ライカファンですが本作は地元で未上映の為、海外の動画に拙稿な字幕をあて拝観しました。
というか、訳す為に繰り返し止めては再生を繰り返してエンディングまで5日程かけたので、普通に見ていると気づかないであろう事をとても多く感じました。

本作の芸術的真価は疑いようは無いですが、撮影方法は手段でしかなく、それが映画としての価値を決めるものではあってはなりません。やはり物語あっての映画です。
と、前置きしたうえで、私はこのストーリーはとても素敵だと思います。ですが、あまり評価されていないのは、観る側の想像力の欠如に起因してる気もします。

多様性の無い時代に、名誉欲、と言えば聞こえは悪いのですが、貴族として生まれた者がそれを求めるのは命題であり当然。まして前人未踏の偉業を達成し、名実ともに価値ある者になろうとするのは立派な事なんです。

そして、現代のように容易に情報は手にはいらず、何が真実で作り話かもわからない、謎がロマンであった時代に、それを信じて追いかける孤高な人物像はとても魅力的に映りました。
その行いは道楽ではなく、当時の歴史学的見地においては非常に意義深い事でもあります。
にもかかわらず愚昧に映るのは、演出であったり、フロスト側の学者が皆無で、対立するダンセビーというフィルターを通して見さされてるからであって、彼がバカだからではないです。
また、我々が現代人だからであり顛末を理解しているからでしょう。

彼の性格において、他人への共感力が薄いのは、他人にへつらう必要のない環境で育った結果であり、その今っぽくないユニークさがうまく現れていると思います。

男女間のロマンスにおいても、とてもいい距離感だったと思います。
人形劇ですし、濡れ場などないわけですから、触れるか触れないかギリギリの所で二人の揺れうごくピュアな心情を描いてたのは効果的であり好感ももてました。
すれ違う二人の心のうつろいは、ストップモーションアニメのすばらしさと同等でとても繊細に描かれており、その細やかな表情の変化も人間以上に豊でした。

映像的な見せ場は数多いですが、動きも込みで楽しかったのは、船の中で男女2人が会話をするシーン。船の揺れにあわせて物や立ち位置が変わるのがコミカルで楽しく、『海の上のピアニスト』の演奏対決シーンを彷彿させました。

サスカッチ(ビッグフット)のデザイン(とくにイラスト)が個人的にはとても好きなのですが、後半にも満足のいくキャラクターやシーンが出てきたので最後まで飽きずに観られました。

難点というか、首をかしげたくなったのは、価値観がどんどん変わっていくところでしょうか。
何かの象徴的な場面では感動的な音楽が流れるのですが、話の進行にともないそれを否定する場面も出てきてまた感動的な音楽が流れる、というのが何度かありました。
終わってみれば作品としてメッセージ性に一貫性がないなーとは感じましたが、観てる間は価値観が上書きされていく事に成長を感じるので、否定的に評価することでも無いかとは思います。

無名