「【愛する人を突然失った喪失感を、3年の月日の中で少しずつ癒していく男の姿をアコースティックミュージックに乗せて優しく描き出した作品。】」サマーフィーリング NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【愛する人を突然失った喪失感を、3年の月日の中で少しずつ癒していく男の姿をアコースティックミュージックに乗せて優しく描き出した作品。】
- 突然、恋人サシャを亡くしたロレンスとサシャの家族達の呆然とした姿から映画は始まる。ロレンスはショックでゾエ(サシャの妹)の風貌がサシャを思わせると言い、目をきちんと見れない。
同じ思いはサシャの家族も同様であるが、夫々日々の生活に戻っていく。-
・物語はロレンスとサシャが住んでいたベルリン、サシャの家族が住むパリ、そしてロレンスが新たな一歩を踏む出すために移住したニューヨークの3都市の風景の中、サシャと所縁のあった人々が徐々に再生していく姿を3度の夏の陽光とともに16ミリフィルムで柔らかく写し出している。
・フランスのアヌシー湖でサマーバケーションを楽しむ人々の姿、アヌシー湖で一人泳ぎながら遠くの山々の風景を見るゾエの表情、三都市の公園で憩う人々の姿が美しく、印象的である。
<深い悲しみは直ぐには癒えない。ゆっくりと時間をかけて市井の生活を送るなかで徐々に薄めていくしかない>
・ミカエル・アース監督の長編3作目「アマンダと僕」では気が付かなかったが、この監督の音楽センスは素晴らしい。
・静かなシーンではアコースティックギターの音色を微かに奏で、クラブやバーで流れる音楽は ”The La's” ”Pixies" そして”Felt”の”PENELOPE TREE”など、懐かしくも美しい80年代アコースティックミュージックである。
・エンドロールで”ben watt” の名曲”north marine drive"が流れた時、その思いは確信に変わった。
<今作品は、アコースティックの調べの中、ジワリと人の優しさが心に染み入る素敵な作品である。>
ー この作品をかけてくれた、地元のミニシアターには感謝の言葉しかない。 ー
<2019年10月22日 刈谷日劇にて鑑賞>