「お前が死んだら誰が家族の事を思い出すんだ。」風の電話 くりさんの映画レビュー(感想・評価)
お前が死んだら誰が家族の事を思い出すんだ。
震災で生き残った少女が、
世話になっている叔母の
事故をきっかけに、
広島の叔母の家から
被災した故郷の岩手まで
ヒッチハイクする過程で
人生に向き合うお話しでした。
天災は、大地の命を踏み荒らし
世界を変えていきます。
コンクリートでおおわれた
埃の無い世界と対極にある
世界観がまだ記憶にあります。
ハルは制服にローファーの靴を
はいているんですが、
本作で彼女は、
何度も水溜まりに浸かり、
革靴は泥で汚れていました。
水害の現場を経験したら
わすれられないのが
泥と臭い。
無力感の象徴として
胸が痛い。
冒頭シーンで、
ハルが叔母と玄関での抱擁シーンや
ヒッチハイク中、
世話になった家のおばあちゃんに
手を握らせてあげたままにするように
触れ合うことで安心する彼女が
痛々しい。
ふれたら壊れそうで透明な
雰囲気から
旅の出会いによって
少しずつ色彩を取り戻す様に
惹き付けられます。
そして、
ハルは、駅のホームで
会話した少年から聞いて知る、
「風の電話」を。
あなたは誰と話しますか。
風の電話は心でします。
風を聞いたなら
想い
伝えてください。
想いはきっと伝わるでしょう。
実際にこの施設を設立、開放した
佐々木格・祐子ご夫妻の
亡くなられたいとこの男性が
書かれた詞。
震災の1年4ヶ月前に、
この男性のご家族のために
建てられた電話ボックスは
震災後、
佐々木夫妻の思いで
周辺をメモリアルガーデンとして
整備して今にいたるそうです。
ここでの、
ハルの言葉は涙なしでは
とても見られない。
「…今度逢う時は、
私はおばあちゃんだよ。…じゃあ。」
電話ボックスから出て、
歩きだすために
風にのせた言葉。
でも、
一番心に響いたのは
森尾が車でハルに
家族を亡くした時、
何故後を追わなかったのかを
問われた時に話した言葉かな。
「死ななかった。何でかなあ。
ハル お前が死んだら誰が家族の事を
思い出すんだ。」
亡くなった方を忘れない事が
供養になるということか。
おすすめ。
くり様
諏訪監督は台詞を俳優さんに任せるそうです。
そう思って観ると
モトーラさんや西島さん、西田さんの言葉の重みが増しますね。
震災から約10年。
先日みたFukushima50
も観なきゃいけない、と思える映画でした。