劇場公開日 2021年2月26日

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「今いる世界から一歩踏み出す」あのこは貴族 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今いる世界から一歩踏み出す

2021年3月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

原作未読ですが、主演の門脇麦さんが気になり、それなりに注目していた作品です。彼女を知ったのは何年か前のテレビドラマです。不思議な空気感をもった女優さんで、以来ずっと気になってました。最近では大河ドラマにも出演していましたが、そこでの役は彼女のよさが生かされてない感じで、いささか残念な出演作となってしまいました。さて本作では、貴族の令嬢役で、主演としてどんな演技を見せてくれるのかと、不安と期待混じりで鑑賞してきました。

失礼ながら、正直、門脇麦さんは令嬢のイメージとはちょっと違うなと思っていたのですが、これがなかなかどうしてよくハマっていました。話し方から立居振る舞い、細かな所作まで、きちんとしていて一部の隙もありませんでした。一方、田舎から上京して必死で生きる女性を、水原希子さんが演じます。これまたイメージとのギャップを跳ね除け、ピタッとハマっていました。都会で気を張って踏ん張る姿と、田舎で素顔の自分に戻ってリラックスした姿との演じ分けが絶妙でした。

そんな主演二人の見事なキャスティングのおかげで、大きな事件も起きずに静かに展開していくストーリーなのに、いつのまにか作品世界に引き込まれていきます。本来なら出会うはずのない華子と美紀は、着飾って料亭で高級料理を楽しむ上流階級と、ジャージに身を包み自宅で煮物を頬張る庶民。その生活は天と地ほどの差があります。

しかし、本質的な部分では同じなのかもしれないと思わされました。生まれた場所や立場によって、求められるものや制約があり、階級は違えど何かに縛られながら生きていることに変わりはありません。それが女性であるなら、なおさらなのかもしれません。そんな現代女性の生きづらさをリアルに描くとともに、同じような思いを抱える女性の背中をそっと後押ししてくれるような作品だと感じました。東京を舞台に描かれるため、田舎者の自分には想像で補うしかないところもありましたが、共感できる部分が多かったです。

互いの生き方に触れ、新しい一歩を踏み出した華子と美紀を心から応援したくなりました。

おじゃる
グレシャムの法則さんのコメント
2021年3月7日

門脇麦さん、確かに不思議な女優さんですね。一人だと飛び抜けた異彩を放つ、みたいな感じはしないのですが、『さよならくちびる』の小松菜奈さんとのハルレオもそうでした。
相手をキラキラと輝かせて、その反射で自分も輝く。それでいて独自の存在感を発揮してるように感じます。

グレシャムの法則