「犬が家族を救う…にはデカすぎるスイング、容赦ない描写を観れば上映館が少ないのも納得」さくら かわちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
犬が家族を救う…にはデカすぎるスイング、容赦ない描写を観れば上映館が少ないのも納得
一番必要な家族像を持っていると思う暖かなドラマだが、動脈を切ってしまった宣伝と、少々残酷で悲惨な描写の数々に耐え難さを覚えた。そして、上映館が少ない理由も同時に伺えた。
前半のアプローチはすごくいい。夫婦のセックスを惜しみもなく教えることで、「性とは何か」を教えてゆく。それぞれが恋や愛に触れるとき、家族に感じる恥ずかしさと有り難みが浮かんでくる。それだけではない。恋の痛みから疑問符、多様性への理解を現実に落としこんだ作風は寧ろ感動的で自然である。そのせいか、地味に映ってしまった節はあるが…。問題は後半だった。兄の死をすでに宣伝の文句にしてしまったがため、兄の死を通過点のように受け止めてしまった。この出来事によって、家族は崩壊。特に、美貴に至っては救いようのないほど無残に散っている。確かに感じていた香りが確信に変わるときの恍惚な姿は美しくてファンシー。そこに、感情の拠り所を求めるのは難しいが。ただ、ここまで現実を美化せずに描いたのは割と独創的で挑戦的なアプローチだと思う。その一方で、ストーリーテラーとなる薫が霞みきっていく。空白のままだった、家族の「穴」を埋めることに尽力した結果、兄の死の影響に意味を成したとは思えなかった。寧ろ、兄が起因となった穴にさくらが入っただけである。つまり、オチが笑える程度に暖まっていないまま落ちるので、ある意味愕然としてしまった。
さくらの上映館が少ない理由は、この話題性の高そうなメンツながら、シリアスで万人受けなど毛頭ない描写にある。優しさの片鱗に触れても不感なまま。ある種尖った家族の奇蹟で、感動と解せないまま、淫らな家族像を見せびらかす形となった。