劇場公開日 2020年11月13日

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「春の話ではありません」さくら aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5春の話ではありません

2020年11月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

難しい

原作も読んでませんし、事前情報ほぼなしで鑑賞。
タイトル的に正月から春にかけての上映予定が遅れたのかなと思ってましたが、「さくら」は、犬の名前なのですね。
ネタバレしてしまうのであまり書けませんが、ストーリーを文字にすると結構ハードな内容なのだけど、しあわせな一家というオブラートに綺麗に包んで、うまく仕上げた感じでした。後からじわじわ来てます。

一応主人公の次男の薫くんを演じる北村匠海。イメージどおりの朴訥な青年です。主に彼のモノローグで、場面が進みます。ただ、物語は彼の物語ではなくて、家族に起きた出来事を綴ったもの。
長男の一(はじめ)は野球部エースで学校の人気者。吉沢亮が演じていて、これまたイメージ通りの良いやつ。妹の美貴は、家の中ではわがまま放題のムードメーカー。小松菜奈が、ストレートに感情をぶつける素直な少女から、少し狂気じみた状況まで振り幅を持った役を好演。
この3兄弟に、優しい父昭人(永瀬正敏)と、母(寺島しのぶ)の両親に、もらってきた子犬の「さくら」を加えた、長谷川家の10年くらいの物語だ。

兄弟それぞれに、さまざまな物語があり、困難や苦難があり、家族の崩壊の危機まで起きる。大事件のエピソードを積み重ねた物語なのだけど、それぞれをドラマチックにせず、平板に描くことでより身近な感じをいだかせる。そんなこともあるよね、といったどこか冷めたような描かれ方に思えた。感情を高ぶらせてぶつかったりすることはほぼ無く、行き場のない気持ちを上手く出せないというリアリティに寄せた描き方だったのかな。北村匠海のトツトツとしたモノローグに、小松菜奈の際立つ立ち振る舞いが、良いハーモニーだと思った。

絶賛はしないけど、何だか面白い作品でした。

AMaclean