「さくら」さくら 重金属製の男さんの映画レビュー(感想・評価)
さくら
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何が起こるかわからないのが人生であり、その中で見たことも聞いたことも感じたこともない事物と出会すのもまた人生である。その都度狼狽えずに自分の中にそれらの居場所を見出せたらいい。そう思いながらも、果たして私は「悪送球」から逃げずに受け止めることができるだろうか。
原作の著者である西加奈子氏は、人間の持つ美しい面も汚い面もありありと描く人だと思う。この映画でその象徴的存在だったのは、やはり小松菜奈氏演じる長谷川美貴ではないだろうか。誰しもが子供から大人になり、その過程で荒々しくて歪な思春期を経験する。大抵の人が当時を振り返り、その青さを大人になって恥ずかしく思うものだが、一人の大人として人生を歩む上で、なくてはならない時期なのだ。悲しみに立ち向かう強さ、誰かを好きだと思う気持ち、怒りを鎮める冷静さ。どんな感情にも直向きであることの大切さや、現実と向き合って受け入れることの大切さに気付かされた。
主題歌である東京事変の『青のID』を聴いた時は、この映画のエンドロールに沿えないのではないかと思ったが、感傷に浸らせるのではなく、あくまで前向きに笑顔で終わっていくラストに合っていたように思う。常に人間は溢れんばかりの感情に満ちていて、絶えず吐き出していくその繰り返しが人間らしさなのであり、どれだけ受け入れ難いことが連続していたとしても、それでも人生は続いていくのだから、せめて笑顔で歩き出したいものだ。
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