劇場公開日 2019年6月29日

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「章が変わるたびに驚きが迸る。静かな中に激情が貫く力作」ペトラは静かに対峙する ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0章が変わるたびに驚きが迸る。静かな中に激情が貫く力作

2019年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

田舎の村を訪れる女性。どうやら彼女は絵描きのようで、とある大物芸術家のもとで創作活動をしようとしているらしい。映画は穏やかに、かつ静かに展開し、その先に何か起こるとしたらせいぜい芸術論をぶつけ合うくらいしかないのではないかというほどだ。が、これが一つの事件をきっかけに、時代や記憶、繰り返される悲劇などを絡めた、小さくとも深くて激しい、うねりのある叙事詩へと転じていく。

物語をそのまま時系列に並べると、古典的な文芸作のように仕上がったはず。ところが作り手はそうはしない。あえて時系列を操作することで、観客がスクリーンを見ながら抱いていた「違和感」の答えらしきものを後付けで提示し、さらにチャプターが変わるたびに「えっ!」と言うスリリングな心境をもたらしてくれる。静けさは激情の裏返し。観客は何が起ころうともこの結末を見届けずにいられない。結果的に、強靭かつ骨太な人間ドラマがそこには出現していた。

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牛津厚信