劇場公開日 2020年7月24日

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「何が友情だったのか?さっぱりだった…」17歳のウィーン フロイト教授人生のレッスン shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5何が友情だったのか?さっぱりだった…

2020年10月11日
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精神分析学の始祖ジグムント・フロイト大先生と家庭の事情で丁稚奉公にウィーンに出てきた17歳の青年とがタイトルにあるような素晴らしい友情物語を結ぶと思いきや、深い関係が築かれることもなく、とてつもなく軽い関係のまま終わる。

あるとき、青年がフロイト先生に軽い恋愛相談にのってもらうと、凡百の人でもアドバイス出来そうな軽い深みのないアドバイスでがっくり。

好きな女の子に相手にされないからってくよくよしないこと、夢で見たことを書き記しておくこと、そしてその女の子を諦めるか、探すかのどちらかだと言われ、自力で探しあてる。大したストーカーぶりだ。

青年は夢を書き記すようフロイト先生に言われた件に関しては、フロイトの精神分析手法で有名な夢判断がなされるかと思いきや、たいして見てもらうこともなく、何も起こらない。

青年に人生は忍耐だとかいうが、なんともジジ臭くて味気ないアドバイスしかできなかったフロイト大先生がつまらない人であったことをこの映画は言いたかったのか?全世界に精神分析学のみならず、哲学や芸術やらに言葉では言い表せないほどの影響を与えたあのフロイトだよ?少しはフロイトの本を読んだことある人なら地味なただのどこにでもいる優しいおじいさんでしたじゃあ、納得いかないでしょ。クローネンバーグもきっとがっかりだよ。

ナチスがオーストリアを併合し、ユダヤ人であるフロイト先生に身の危険が及ぶ前にロンドンに逃げるようにと青年に言う。そして、フロイト先生はロンドンに向かうが、頑固もののフロイトを青年の忠告が助けたとでもいいたいのか?いやいや流石にそんな忠告をされずとも自分の身が危ないことくらいはわかっていたはず。
あの展開もフロイトが本当にウィーンから離れたくないなかで、青年が強く説得するくらいの激しさがあればよかったが、高級な喫茶店で高級なコーヒーをおごってくれたお世話になった先生にタバコを届けに行ったついでにちょろっと言ってみた程度の淡々として地味な感じだった。

冒頭、母親は義理の父親のハゲおやじと真昼間からセックスしてるし、その稼ぎ手の義理の父親がいきなり死んで、食い扶持がなくなり母親に無理やりど田舎から丁稚奉公に出されて、 17歳でタバコ屋で働く、言ってみれば学もなく愛情もなく育った青年。そんな惨めな青年をグレさせずに精神分析で立派になるように導いてくれる話だと思いきや全く違う。青年も不思議と悲愴感がないし、恋人(娼婦)を家に連れ込んでセックスしたりなかなかたくましいし、学校に通ってないわりに頭もそれなりに良さそうに見えるが、それが余計に物語をわかりづらくしている。実はこの映画、フロイト先生とこの青年との友情物語がメインテーマではなく、ナチ時代のオーストラリアの惨状がメインテーマだったのか?だとしても、いつの間にかハーケンクロイツの垂れ幕が街を覆うようになってて、何がどうなったか観客は何もわからないから、ナチスものとしてはかなり中途半端。

ユングやアドラーなんかとけんけんがくがくやり合って忙しいフロイト先生は見知らぬ青年と友情を結ぶなんて暇はなくそそくさと亡命先のロンドン行き汽車に乗って去っていくのだった。

屠殺100%