「ははよ…、この一言に尽きる。」ひとよ ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
ははよ…、この一言に尽きる。
開始5分で、作品に引き込まれるとは…!
これは『万引き家族』以来の衝撃でした。
家族を描くという意味では、同じなのですが、その中身はかなり異なった世界。
子供たちを父親の暴力から守る為に、母親が殺人者になるという…。
しかもその母親役を田中裕子さんが演じているのですから衝撃的!
田中さんの優しそうなイメージからは想像もできない殺人者としての姿。
子を守るためとはいえ、15年も留置所に服役していたというのがなかなか想像できない…。
しかし、いざその姿を見ると、完全に夫を殺して15年後に帰ってきた、母親の姿に見えるのですから恐ろしい…。
対する、残された子供たちの15年後を演じているのが、佐藤健さん、鈴木亮平さん、松岡茉優さん。
幼い頃の衝撃的な事件を胸に抱えながら、近所の人たちから色々と酷い罵声を浴びせられながら、必死に生きてきた3人。
父親の暴力から解放されて、自由を手にしたはずだったのに…。
将来の夢も希望も諦めた30代の落ちぶれた兄妹の姿がそこにありました。
中でも、佐藤健さんの落ちぶれっぷりはなかなか凄い。
髭を生やし、今生きている世界全てを憎んでいるかのような、やさぐれだ目に思わず鳥肌が立つほど。
また、鈴木亮平さんのインドアな雰囲気も素晴らしく板についていました。
家族がバラバラになってしまったことに、不安を抱え15年経っても、過去の事件を引きずっている…という暗い性格。
対する、松岡茉優さんの底抜けた明るさが対照的で痛々しい…。
バラバラになった家族をどうにか繋ぎとめようと、必死に明るく振る舞う演技が天才的に上手いです!
こうして改めてみると、超実力派の俳優3人が揃っていることこそが、この映画の最大の魅力なのかもしれません。
4人が親子の柵の中で、もがき苦しみながら生きる姿がとてもリアルで、見ているだけで心が痛くなりました。
あの時、父親を殺したことは果たして正しいと言えるのか?
人としてのモラルと、母親としての責任、そして何よりも、子を思う母親の愛情。
その全てが複雑に絡み合った家族の絆に、私の心は揉みくちゃになりました。
家がのタイトルは『ひとよ』ですが、私の中では『ははよ』というタイトルに変えたいくらい…。
それくらい、親が子を思う強さを感じさせてもらいました。
今回は、完成披露試写会での鑑賞!
佐藤健さん、鈴木亮平さん、松岡茉優さん、音尾琢真さん、佐々木蔵之介さん、監督という豪華なキャストの方々。
音尾琢真さんは、監督の映画に出演するのは9回目だそうで、連続出演していることが何よりも嬉しいとのこと!
これからも監督の映画にキャストとして出演したいと、熱く語られていました(笑)
松岡茉優さんのキャラクターにも注目!
彼女の底抜けた明るさは、映画のキャラクターそのもの。
普段の彼女も、こんなに明るいのかと思うと、こんな楽しい彼女と一緒に共演できる皆さんは幸せだろうなと思いました。
佐藤健さん曰く、この映画のアクションシーンにも注目だそうで、佐藤健さんが、佐々木蔵之介さんに蹴りを入れるシーンは、手加減せずに真剣に演技したとのこと。
映画を観るまでは分かりませんでしたが、鑑賞後なるほどあのシーンだったのか!
と納得しました(笑)
クランクアップから3ヶ月もないスパンという、異例の短さでの舞台挨拶でしたが、とても素晴らしい作品を観させてもらいました!
いつもいつも、ありがとうございます!