劇場公開日 2021年1月22日

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「BBC制作のドラマと比較して」どん底作家の人生に幸あれ! Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0BBC制作のドラマと比較して

2021年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

観終わっても、自分にはストーリーがよく分からなかった。
また、俳優の“人種”が入り乱れるので、人物の相関関係も把握しづらい。

そこで、原作は未読なので、BBC制作のTVドラマ「デビッド・コパーフィールド」(※)を観てみた。
その結果、上映時間のハンデはあるものの、本作品の酷(ひど)さがよく分かった。
(※)1999年。180分。「ハリポタ」出演前のD.ラドクリフ(当時約10歳)だけでなく、M.スミス、I.マッケラン、I.スタウントンなどが出ている。

本作の酷い点を、3つ挙げてみる。
(a) まず、大人役のデブ・パテルにチェンジするのが早すぎる。
母の死の前に、ワイン工場で働かせられているのは意味不明な改変だ。また、大伯母に保護を求める時点で、既に大人なのは滑稽である。
BBCドラマでは、それらはすべてD.ラドクリフ少年が演じている。
(b) 勤務先の弁護士一家との関係が、あいまいだ。Mr.スペンローも最初の妻となるドーラも、あっさりと消えてしまう。
(c) 致命的なのは、幼少期の盟友にして、2番目の妻となるアグネスとの関係がよく分からないことだ。
しかも、アグネスは奇妙に堂々としており、密かにデビッドに想いを寄せる、BBCドラマのアグネスとは全くの別キャラになっている。

なお、これはBBCのドラマでも同じであるが、本作は舞台が何度も変化するので困惑させられる。
距離も方角も超デタラメな例えであるが、ちなみに関東地方で言うと下記のような感じか。
石岡市あたり(ブランダーストン)が生家で、大洗(ヤーマス)にペゴティ一族のボートハウスがあり、東京(ロンドン)に学校の寮とワイン工場がある。
銚子(ドーヴァー)の大伯母の家まで歩いて助けを求めに行き、成田(カンタベリー)で再教育および就職をする・・・。

イアヌッチ監督は、「従来の作品はストーリーを追うことに精一杯なので、本作品では原作にあるユーモアを描きたかった」という主旨を語っているらしい。
しかし、原作は未読だが、妙な“勢い”があるだけで、ユーモアという点では自分には“滑って”いるように感じられた。
本作の方がBBCドラマより優れているのは、Mr.ディックとの凧揚げのシーン、Mr.ミコーバーとの出会いのシーン、そして、大伯母トロットウッドの徹底した“ロバ嫌い”のシーンくらいだ。

この映画は、「デビッド・コパーフィールド」をすでに良く知っている観客のための“新バージョン”である。
本筋を犠牲にして、脱線をいとわずにユーモアを重視した、と言って良いだろう。
自分のような観客は、とりあえず本作品はパスして、まず先にBBCのドラマを観るべきかもしれない。

Imperator