「二丁の拳銃」永遠に僕のもの Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
二丁の拳銃
アルモドバルは変態の格が違う。
映画を撮るということは、現実に対する、神に対する、神の被造物としての現実に対する反逆行為である。密かな神殺し。
主人公が自分のことを「神のスパイ」と言ったのは言い得て妙だ。
我々が、人の所業からしか人の悪を学ぶことができないのなら、彼が生まれたのも神のみわざか。
男でもあり女でもある。子どもでもあり大人でもある。場に属しているようで属していない。地上の汚れを脱ぎ捨てたように微笑み、地上の汚れそのものである。
見た目はいかにも華奢だが、漲るような力を内に秘めている。それゆえ男性からは天使(マリリン モンロー)のように美しく、女性からは凛々しい男性に見える。
ラモンへの愛は実現できないものだし、地上では何も愛せない。
ラモンへの叶わぬ愛をペニスの代わりに二丁の拳銃で満たす。「朝日のあたる家」の切ないメロディに、アルモドバルの純愛を見た。
オープニングの豪奢な邸宅と、ラストのボロ空き家の対比が印象的だ。
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