ガーディアン・エンジェル 洗脳捜査Xのレビュー・感想・評価
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タイトルからは想像出来ない内容
タイトルとパッケージを見るとSFかなと勘違いしそうだが、第二次大戦後のデンマークを舞台に、実話を元にしたサスペンス。
催眠術にかけられた者が銀行を襲い、催眠術をかけた者を追及するストーリー。
催眠で銀行を襲う事は可能なのか、催眠をかけた事を証明出来るのかなど、ただの犯人探しとは一味違う。
北欧やドイツ映画などの映像の重く暗い感じと、デジタルによるシャープさ、鮮明さが、作品の内容とよく合っていて雰囲気が良かった。
催眠をかけているシーン、かけられているようなシーン、かかっている最中のシーンと、観ているこっちが催眠にかけられている錯覚をおこしそうな工夫があって、これも面白かった。
と、ここまでは表面的な話で、これだけでも充分に面白いとは思うが、もう少し深いストーリーがある。
主人公は大戦中にナチスの手助けをする振りをしながら行動を探る、いわゆるスパイのようなことを父と共にしていた。
しかし、振りとはいえナチスの片棒を担ぐ事に嫌になった主人公はロンドンへ逃亡。戦後デンマークに戻ってくる。
父は主人公がいなくなった後もナチスの手助けを続け、ドイツ敗戦が決まったときに、事故か自殺か判断出来ない死をむかえる。
大戦後6年のデンマークで生き残っている人は、親ナチと、親ナチではないが服従する者、このどちらかが大半だろう。
主人公の父親の友人だった警察署署長は親ナチだ。では父は?
ナチスが負けた時に死んだ父、自分のように逃亡せずナチスの手助けを続けた父、もしかして父は…
この思いが今回の催眠術事件を執拗に追う原動力になる。
つまり、催眠をかけられ自分の意思とは関係なく罪を犯した場合、真に罰せられるべきは催眠をかけた者であり、父の場合に置き換えればそれはナチスだ。ナチスに洗脳のような形で迎合していた父は、罪人ではなくむしろ被害者なのだと、証明したい、信じたいのだ。
今回の事件の真相を究明し、催眠をかけた者を罰することが、父の死の真相を知ることが出来ない主人公の慰めとなるのだ。もし父が親ナチであったとしても、それは洗脳によるものだったと。
ここで面白いのは主人公の妻の存在だ。
彼女はお腹の子を失うという酷い目にあっているが、主人公ほどその事を気に病んでいるようでもなく、見ようによっては主人公に対し愛想をつかしているようですらある。
彼女の行動がどのように転ぶのかがサスペンスフルでハラハラさせるのだが、終わってみれば彼女は、酷いことがあってもそれに耐え、したたかに生き残る強いユダヤ人そのものだった。
反ナチのデンマーク人、親ナチのデンマーク人、ナチス、ナチスに洗脳された人、ユダヤ人、ポーランド人、彼らの第二次世界大戦中とその後を描いた、ある意味、戦争ドラマだったと言える。
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