「定石のサーフィン映画とは異なる意外な中身」ブレス あの波の向こうへ MPさんの映画レビュー(感想・評価)
定石のサーフィン映画とは異なる意外な中身
オーストラリア南西部のビーチは、ほどほどの波と予想外の高波がいい案配でやってくる、波乗りに憧れる少年たちにとっては絶好の訓練場。ある日、浜辺で出会った伝説のサーファーに導かれ、一人前のサーファーへと成長していく少年の物語は、意外にも、サーフィン映画の定石に逆らい、憧れと恐怖の間で揺れ動く主人公の心理と、同時に、陸で彼を待っていた危険な体験に迫って行く。いい波を探し求めて、世界中のビーチを渡り歩くサーファーのライフスタイルを賛美するのでなく、スリルやロマンと引き替えに失うものの大きさを描いて、とても上質で大人びた作りになっているのだ。監督と出演を兼ねるサイモン・ベイカーが、抑制された演出と演技の両輪で物語を牽引していく。ベイカーに導かれて、主人公を演じる本職はサーファーのサムソン・コールターが、とても新人とは思えない心の機微を表現して圧巻だ。オーストラリア映画界の底力を感じさせる1作である。
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