「脚本は不満、だが医師の顔が良い」鹿の王 ユナと約束の旅 夜明さんの映画レビュー(感想・評価)
脚本は不満、だが医師の顔が良い
原作を読まないまま観ました。
序盤までは良かったです。医術と宗教。それから権力者同士の影での攻防。祈りだけで全ては救えず、ただ祈りがなくては救えないものもある。そういう流れになるのかなぁと思ってました。原作はそういう話をしっかりと書いているのかもしれません。
ただ映画ではそこら辺が端折られているのか、だいぶおざなりだったし話の内容や構成が薄く感じました。せっかく良いテーマだったのに…
病原体や抗体など、論理的に綺麗にまとまるのかと思いきや、突然知らないお爺さんの怨念が出てきてファンタジー展開に持っていかれました。ミッツァルは病原体ではなく呪いなんですか??そして結局最後は親子愛??愛のパワーで感染症が治るわけがないでしょう。
この作品は精神論や魔法の力に頼ってはいけないような気がします。特にこんな時代なのですから。神のような不可思議な存在に選ばれたヴァンも確かに英雄ではあるのでしょうが、知恵を持って未知の病に立ち向かおうとしたホッサルにもう少し焦点を当ててみるべきではなかったでしょうか?愛の力で世界が救われる話は個人的に好きではありません。なぜならば、病に犯され助からなかった人達は「信仰心や努力が足りなかった」と言われているように感じるからです。
ホッサルのセリフを借りると『その途方もなく大いなるもの』や『神々の領域』と名付けてられる未知の存在に、私たちは立ち尽くし目を瞑るべきではないと思うのです。魔法でも奇跡でもなんでもない。自分たちの、人間の知恵を持ってこの困難を乗り越えられると、この作品を通して今の陰鬱とした時代に希望を見出させて欲しかった。こう不満を引き出させている時点で、良い作品なのかもしれませんが。
ただこの映画で1つ評価できるのは、ホッサムの顔が良い。大変いい。賢くておっちょこちょいで、ちょっと空気が読めていなさそうなキャラもいい。
あのキャラデザを考え、そして案を通してくれた製作者の皆様方。本当にありがとうございます。
ホッサムの顔と声と性格を評価して星3にしました。