「子どもだった私からのプレゼント」魔女見習いをさがして もりめろんさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもだった私からのプレゼント
この感想を書いている私は、今年30歳になった。
『おジャ魔女ドレミ』が始まったとき、私は9歳の小学3年生で、ドレミたちと同い年だった。
彼女たちは実際に1年ごとに進級して、小学校を卒業して最終シリーズが終わる。
だから同じタイミングで、私たちは小学校を卒業した。
この「魔女見習いをさがして」は、そんな「30歳の私」が主人公である。
たしかに20年の年月を重ね、魔法なんて存在しないと知って、生きることの大変さを知った「私」。
細田守が監督を務めたテレビシリーズの名作回「どれみと魔女をやめた魔女」にも
代表されるように、少女向けアニメなのに、おジャ魔女シリーズはわりとビターだ。
けっこう、重たいテーマを扱っている。
この映画版も同様なのだが、本作に特徴的なのは、
多様な価値観を包摂することを何よりも大事にしている点だと思う。
SNSの炎上、発達障害、フェアトレード…。
でも何より驚いたのは、主役の1人がガールズバーでバイトを始めたところだ。
他人から白々しい目で見られる職種だが、
どこまでも明るく描いていて、そのどこにも厭らしさはない。
当時にアニメを見ていた人で、水商売に就いている(いた)人もいるだろう。
でもそれが生きるために選んだあなたの「魔法」で、それは胸を張っていいことなんだよ。
胸を張っていいってことを、小さな頃にあなたが愛してくれた私たちが肯定するよ、
ドレミたちがそう言っているようだった。
どこまでも女児アニメであろうとする、女児のあらゆる未来を肯定するよ、という製作陣の覚悟を見た気がする。
モブキャラで、ドレミたちの声優が起用されていた。
エンディングまでは交わらない新主役3人とドレミたちだけど、その時折の声で、
私のこの世界にもドレミはいるよ、というメッセージのように思えた。
最後、幼少期のころの姿をした主役3人を連れてドレミたちが空を飛ぶ。
私たちは子どものころ、ドレミたちと一緒に過ごせていた。
そんな幸せだった私たちに、彼女たちは今でもずっと寄り添ってくれている。
小さな頃を思い出せば、好きだったアニメのキャラはいつでもすぐ隣にいるわけだから、
私たちの記憶の中で、彼女たちは私たちにずっと寄り添い続けてくれているのだ。
エンディングは、そのことを描いたシーンなのだろう。
この映画を観て幸せな気持ちになって、
明日からまた頑張ろうと思った人は多いと思うんだけど、
それはドレミたちが私たちを肯定して、
あなたの世界にも私たちはいるからね、
と勇気づけてくれていると考えてみて欲しい。
そう考えられるのも、あなたが小さな頃に『おジャ魔女ドレミ』に夢中になったからです。
だからこの作品は、幼かったあなたからの、大人になったあなたへのプレゼントだ。
私たちの人生は捨てたものじゃないよ、ってことを、私たちの過去が教えてくれる。
これって、とても幸せなことだと思います。
大好きな『おジャ魔女ドレミ』を、
こんな素晴らしい映画版を作ってくれた制作スタッフさん、ありがとうございます。
30歳になって、アラサー商法で色々な作品がリブートされているけれど、
これを超える作品はちょっと思いつきません。
最後に蛇足ながら、私は男性です。おんぷちゃん大好き、男子はおんぷちゃん好きが多いのです。