劇場公開日 2019年8月23日

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「最高のミュージカル伝記映画」ロケットマン andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0最高のミュージカル伝記映画

2019年8月28日
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鑑賞方法:映画館

エルトン・ジョンの曲は「Your Song」しか知らない私。
「ボヘミアン・ラプソディ」を仕上げたデクスター・フレッチャー監督だし伝記映画だし似ているのかな?と思っていたが、こちらはエルトン・ジョンの曲に彩られた完全たるミュージカル映画。子役からタロン・エガートンに替わるところとか最高に素敵な演出である。
音楽家というものはなぜ成功すると酒とドラッグにいっちゃうのか...と思うが、そこまでの葛藤と転落のドラマがすごく沁みる。
報われない愛、愛されたと思ったら幻だった愛、両親から得られぬ愛、愛、愛。とにかく愛の欠乏。そして自らの性的指向から来る「自分を隠す」パフォーマンス。本来内向的だった筈の彼のド派手な衣装は「鎧」であったのだなあと分かる(勿論本人の好みもあるのだろうけれど)。
しかし、成功というのは難しい。成功が人を変えるというより、成功したことによる環境の激変、そして成功にあやかろうと思ってやってくる人間関係...。こういう話を観ていると、自分を失うのはあっという間なのだな、と分かる。エルトン・ジョンはそこから抜け出すことができたけれど。彼の悲しみとそこからの復活に涙してしまった。どれだけの呪縛が彼を縛っていたのだろうか。
タロン・エガートン、エルトン・ジョンにしか見えない充実の成りきりぶり。憔悴していく様も圧倒的。しかし何より吹き替えなしの自身歌唱...!圧倒的...!憑依型の称号は彼に与えられるでしょう...。
“based on true story”が出てこないので、相当の脚色があるのだろうけど、ミュージカルだし、ある種の分かりやすさがあった。伝えたい思いを存分に伝えきった映画だと思います。

andhyphen