「どこまでも切なく、美しく、そして悲しい」ロケットマン キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
どこまでも切なく、美しく、そして悲しい
「ボヘミアン・ラプソディ」と比較されてしまうのはしょうがないが、あちらが鬱屈した自己をライブエイドでのパフォーマンスで開放したのに対して、こちらはステージの上こそ、主人公の悲しさが強調される構成になっている。
彼の「鎧」である衣装が、より大きく、派手になり、彼の才能が最も輝くべきステージのスポットライトの下でファン達の喝采を浴びれば浴びるほど、彼の孤独は際立っていく。
エルトン・ジョンを演ずるタロン・エガートンは、濃いめの性描写にも果敢に挑戦していて素晴らしい。
この物語において象徴的な「Goodbye Yellow Brick Road」がいつも流れている。
彼の活躍は、一方で酷く虚しい、ドロシー達が歩いたあの「黄色のレンガ道」なのだ。
そしてタイトルの「ロケットマン」。
ラスト。
施設へ入った彼のいわば「魂の救済」のシーン。
しかし、本当の意味で彼が救われた訳ではなく、彼は自分との向き合い方、「個」のあり方を見つめ直す。
天才であったが故に、彼は地獄にさえ安住の地が与えられなかった。
彼の愛するものは手に入らない。しかし世界中で彼と彼の作品は愛され続けている。なんという皮肉。
彼がまだ健在で、映画にしっかり関わっていることにも、大きな意味がある。
どこまでも切なく、でも美しく、そして悲しい物語。