「「奇跡」」僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング ピクルス君さんの映画レビュー(感想・評価)
「奇跡」
原作、アニメと以前から視聴し好きな作品だったので今回の映画を見に行きました。
キャラは多くのキャラが活躍し様々な側面を、垣間見る事ができ大変良かったと思います。
アクションについても同様で、映画ということもありバリバリ動いた良い作画だと感じました。
ただストーリーに関しては、最後の部分が引っかかりました。ボスを倒すにあたって出久が爆轟にワンフォアオールを託すのですが、これが最終的には出久に戻ります。本来、渡した個性が戻ることはあり得ないはずなのですが、これに対しオールマイトは「奇跡」だと述べていました。ここが自分には引っかかってしまいました。本映画では一応、爆轟が途中で気を失ったため譲渡が不完全であったという事でしたが。これは、初耳の設定です。
一頻り戦闘を行っても最終的に意識を失えばワンフォアオールを譲渡せずに2つに分割出来るという設定を本作の世界に作り出してしまったことはファンとして非常に残念です。またこれを「奇跡」の一言で片付けてしまったのも非常に残念で遺憾に感じました。物語において、特にファンタジーに理論をつけリアル感を描写している本作においては「奇跡」の描写は今後のストーリー展開に非常に邪魔な存在になったと思います。今後、もっと強大な敵と戦わなければならないでしょう。出久も全力で戦わなければ読み手は感情移入できません。しかし本映画で「奇跡」の前例を認めてしまったことで読み手は「ワンフォアオールをまた譲渡すればいいじゃん。」や「どうせ都合の良い奇跡が起きてこの敵も倒せるんだろう。」という思考が必ず強敵とのピンチのシーンでよぎります。これが自分は嫌で嫌で仕方がありません。今回の映画の正に蛇足というのが最も正しいであろう「奇跡」によって今後のストーリー展開を純粋に楽しむことが出来なくなってしまいました。展開の読めない、どちらが勝つのか、どうやって勝つのか、考えながら読むワクワクする気持ちをこの映画に奪われてしまったと感じました。非常に残念です。
ストーリーにとって「奇跡」は麻薬です。都合の悪い事実から目を背けて都合の良い事実を構築します。ただし安易にそれに救われれば、人は一気に堕落します。奇跡に一度救われたものは、その後いかなる困難があろうと脳裏で前回の事がよぎり、全力で立ち向かうつもりが必ず何処かで期待します。一度期待を持ったものはもう二度と全力で立ち向かうことが出来なくなってしまう、足枷になるものだと。自分はそう思います。
同じ書き手として「奇跡」の重さと使い所に、もっと慎重な判断を取って欲しかったと思います。