「語り口が小洒落すぎてて、理解できない」ライフ・イットセルフ 未来に続く物語 うさぎぐさんの映画レビュー(感想・評価)
語り口が小洒落すぎてて、理解できない
あるところに、とても愛し合っているカップルがいました。2人の愛はそれはそれは深いものでしたが、ある日…みたいな感じで話が進み、これは寓話的な語り口なんだな、と観客は思う。
だから分かりやすい不幸が積み重なるし、時空は歪んでるし(あのiPhoneは何年モデルだ?)、さすがに今どきのスペインはそんなじゃないだろ、と思うけど、寓話だからOK。
しかし、ただの寓話では終わらず、この話は誰が語ってるのか?という、メタな視点が持ち込まれるのが、ややこしい。
…という脚本でした、とか、という妄想でした、とかわざわざ混乱させる描写はイマイチだけど、おじいちゃんが感動的な台詞を喋った後に、実は、そんな事言ってなくて、本当はこんな冴えない台詞だったと、積み重ねる演出は、ちょっと好きだった(まぁ人生そんなに格好良くはいかないよね)。
そのうち、観客は、この映画にとって、語り手問題というのが、隠れたテーマなのか、と考え始める。
極め付けは、ヒロインが、大学の卒論で、「信頼できない語り手」の理論を持ち出すところ。それは、人生そのもの!とまで言うんだから、テーマはこれで決まりだね、とも思う。
観客は、ラブストーリーの展開ととともに、信頼できない語り手理論が、どう着地して、お話と絡み合うのかを見守ることになる。
が、これが、着地しないんである。
。。。
結局、孫が、祖父母世代のストーリを本にして出版して、その話を講演で語ってる、というシーンになり、不屈の愛の強さを訴えるんだけど、これって、ごく普通の語り手だよね…。
信頼できない語り手は、どこに行ってしまったのか。あれほど連発したトリッキーな語り口は、何のためだったのか。そこが全く釈然としないのである。
寓話調も好きだし、ヒトを食ったような演出も面白いところは面白いんだけど、ちゃんと落とし前をつけて、納得させていただきたい。