「【真のテロリストは誰だったのか? 20数年前の日本大使公邸占領事件の実情を思い出す】」ベル・カント とらわれのアリア NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【真のテロリストは誰だったのか? 20数年前の日本大使公邸占領事件の実情を思い出す】
冒頭の反政府ゲリラのペルー副大統領邸宅で行われていたサロン・コンサート襲撃シーンは緊迫感溢れる。
が、ペルー政府は反政府ゲリラの要求を頑なに拒否し、メディアにすら人質の情報が掲載されなくなる。
この時点で、政府のこの占領事件に対しての方策が見えてくる。
反政府ゲリラの構成は、若き元教師がリーダーで、未だ少年少女の面影を残す夢多き貧しき若者が多数を占める事が徐々に分かってくる。
時が流れて行く中でゲリラ達と人質達との間に、交流が生まれる。それは日本人通訳人質(加瀬亮)と若き聡明な女性ゲリラとの愛であったり、ロクサーヌ・コス(ジュリアン・ムーア)の若きゲリラ兵に対するオペラの指導であったり、皆で楽しむサッカーであったり。
それは、恰も人質達が若きゲリラ達を可愛がって色々指導しているようにも見える。(序盤誤って人質を殺めてしまった少年ゲリラに人質の熟年男性二人が”君は真面目だからこの事件が終わったら私の元で働け”と言い、少年が照れ笑いを浮かべるシーンがある)
が、政府軍の一瞬の冷徹で残虐な行動でゲリラと人質達の不思議な絆は立ち切られる。
<解放された人質達に笑みはなく、当時のペルー大統領だったフジモリ大統領を容易に想起させるマスダ大統領が誇らしげに国旗を振る姿に、憎しみさえ覚えたのは私だけだろうか?>
NOBUさん、いつもお世話になっております。
さすがにテロリストを肯定する映画ではないと思うのですが、彼らにしても元は普通の一般庶民だったということを訴えてきました。
メディアにも一切登場しなくなった時点で、自分たちの要求が無視され、犯行声明すら踏みにじられた感じでしょうか。この時点でハッピーエンディングは無理だし、死刑執行を待つだけの刹那的な表情が浮かんできそうでした。せめて犯行声明くらいはマスコミに再掲されなきゃ・・・