「昔の話でも、無関係な話でもない」エンテベ空港の7日間 ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)
昔の話でも、無関係な話でもない
40年以上も前の話で、登場人物の背景も複雑ですから、予備知識に不安がある人は、
事前にパンフレットを購入し、読んだ方が良いと思います。
いまだに、パレスチナ・イスラエル問題は解決していません。
なぜ、日本人やドイツ人がパレスチナのテロリストとして、事件を起こしたのか
を考えるきっかけになれば、良い映画です。
バットシェバ舞踊団「エハッド・ミ・ヨデア」というダンスで始まり、物語と共に
上演されます。
監督曰く、「イスラエルとパレスチナの抗争はお互いに傷つけ合っている」という
ことを比喩的な形で表現したそうです。
ドイツ人がユダヤ人を「選別」し、大量虐殺したことについては、
「シンドラーのリスト」「ヒトラーと戦った22日間」「否定と肯定」
「ヒトラーを欺いた黄色い星」「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」
「ゲッベルスと私」という映画を鑑賞すると理解できます。
ハイジャック犯が、ドイツ人ではなく、日本人であったとしても不思議はない
という以下の事実も知った上で鑑賞すると理解が深まると思います。
1972年5月8日、パレスチナ過激派テロリスト4人が、ベルギーのブリュッセル発
テルアビブ空港行きのサベナ航空のボーイング707型機をハイジャックして、
ロッド国際空港に着陸させ、逮捕されている仲間317人の解放をイスラエル政府に
要求しました。
イスラエル政府はテロリストによる要求を拒否し、ハイジャックしている
テロリストを制圧し、犯人の内2人は射殺され、残る2人も逮捕されました。
93人の人質の解放に成功したものの、乗客1人が銃撃戦で死亡しました。
この事件に対する報復として、以下の事件が起きました。
1972年5月30日、日本赤軍幹部の奥平剛士(27歳)と、京都大学の学生だった
安田安之(25歳)、鹿児島大学の学生だった岡本公三(25歳)の3名が、
パリ発ローマ経由のエールフランス機でロッド国際空港に到着し、スーツケース
から取り出したVz58自動小銃を旅客ターミナル内の乗降客や空港内の警備隊に
向けて無差別に乱射し、26人を殺害し、73人に重軽傷を負わせました。
奥平剛士は射殺され、安田安之は自殺し、岡本公三は逮捕されました。
アラブとイスラエルの抗争に無関係とされていた日本人が、一般市民を無差別に
殺害したことは世界に衝撃を与えました。
日本政府は、イスラエル政府に襲撃事件に関して公的に謝罪の意を示すとともに、
犠牲者に100万ドルの賠償金を支払いました。
そして、本映画の「エンテベ空港奇襲作戦」へと続きます。
1976年6月27日、イスラエルのテルアビブ空港発、ギリシャのアテネ空港経由、
フランスのパリ空港行きのエールフランス139便、エアバスA300(座席数300席)が、
ハイジャックされ、ウガンダのエンテベ空港に着陸し、岡本公三を含むイスラエルで
服役中のテロリスト40名に加えてドイツ等などで服役中のテロリストの釈放を要求
しました。
岡本公三は、今はレバノンのヨルダンで暮らしています。
今でも、イスラエルのテルアビブ空港等では日本人に対する入国審査と出国審査は
厳しく行われています。
パンフレットは、よくできているので、映画を理解したい人にはお勧めできます。