「歴史とは極めて個人的なものである」ガーンジー島の読書会の秘密 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史とは極めて個人的なものである
「英国総督 最後の家」にしても「スターリンの葬送狂騒曲」にしても、そして本作「ガーンジー島の読書会の秘密」にしても、ここ数年のイギリス映画は、重く暗い歴史的事象とコメディとを融合させた作品が目を見張るなと思う。もちろん歴史には様々な考えや意見があるので、必ずしもコメディにして喜ばれるわけではないであろうし、映画にして受け入れられるわけでもないかもしれないけれど、一方で、コメディにするからこそ伝わるということも往々にしてあるものだ。
この作品にしても、ロンドンの文筆家がガーンジー島を訪ね、そこからその土地の歴史を紐解き記事にする、という内容であることに違いはないが、その文筆家であるヒロインのジュリエットが最終的に書いたのは一人の女性を巡るロマンスである。歴史を総合的に捉えて語るのではなく、一人の女性の人生に引き寄せることで、イギリスの国の歴史が現代の日本に暮らす私にとって一気に身近なものに変わる。歴史と言うのは、社会や国のものとして語られることが多いが、そんなはずはない。その時代に生きた一人一人の人生についてのものであり、極めて個人的なものだと再認識する。
それにしても読書会の面々は、重々しく秘密を抱えているようでありながら、それぞれに実に口が軽いこと。ジュリエットが問い質せば誰しもが存外あっけなく口を割ってくれるので、秘密が暴かれていく高揚感のようなものは薄かったように思う。もう少しミステリー的な感じで国の歴史とエリザベスの歴史を紐解いて欲しかったというのは正直な感想。
エンディングは「なんだ結局ラブストーリーか・・・」と言われてしまいそうな気もするが、いやいやあくまで歴史というのは個人のものなんですよ、と言う意味で、私は悪くはないだろうと感じた。