「ザ・ブリッツの爪痕」ガーンジー島の読書会の秘密 Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
ザ・ブリッツの爪痕
この作品は、第二次世界大戦中、ドイツ軍に占領されていたイギリスの領土ガーンジー島でエリザベスという女性が活躍していた時と売り出し中の作家ジュリエットが、ある手紙が来たことによって、ガーンジー島で暮らすことになるジュリエットの時が交差する"Nonlinear narrative"形式をとっているが、一見複雑になりがちなこの形式において本作では違和感のないものとなっている。
映画の冒頭、時代は1941年、現代では当然一般の人たちが、その大切さが空気のような存在で、それがなくなれば大変なこととなってしまう表現の自由の一つである集会の自由が、当然の事としてドイツ軍によってガーンジー島の島民は、制限を加えられていた。そして豚や食料となるものは、ドイツ軍に徴集されていたが..........?
ある晩、そんな中、久しぶりのごちそうでいい気分になった村人達だったが、その帰り、ドイツ軍に見つかってしまう。しかしエリザベスの機転によってうまく切り抜けることができたのだが....! ここでおかしなことが、ひとつ、仲間の一人のイーブンが、ドイツ将校のブーツに吐いてしまうシーンがあるのだけれども普通ならそこでライフルや銃の柄の部分で殴られたりするのが習わしのように出てくるけれども、いたって平和的に解散する。いつものあの残虐なドイツ兵ではない.....何故?
"恋は、本屋さんに売っている"というキャッチコピーをご存じの方ならわかると思うが、カナダの出版社が出した"ハーレクイン・ロマンス"シリーズといういわば少女趣味的と言えばごへいがあるかもしれないが、甘い、甘い、ラブロマンスだけの小説が日本でも70年代後半から出版され、テレビでもCMなんかも流されていたと記憶しているが、それほど日本でも読者がいたという事か? 個人的には、いわば半分"ハーレクイン・ロマンス"小説になりかけていたものが、エリザベスの人間性あふれる弱いものをほおってはおけない、また愛する者に対しての決して許されることのない愛を貫く行動力などが、この映画をただのラブロマンスとしてだけ終わらせてはいない大切な要因かもしれない。それとイギリスの監督には失礼と思うが、とにかく主人公のジュリエットがガーンジー島に行くまでは面白いほどシナリオがサクッサクッと進んでいきあれよあれよと話しに入っていけたのも2人のアメリカ人脚本家によるところが大きいと思われる。
ジュリエットがガーンジー島についてからは、エリザベスの足跡をたどるようにシナリオが進行するので多少ペースダウンとなるのだけれども、その進行の遅さがかえってエリザベスの人間性に触れる機会が増え、感情移入のしやすい映画作りがされている。そして忘れてはいけないのが、ジュリエットに手紙を送り、島に来るきっかけを作った島に生きる素朴で友人思いで、しかもエリザベスと共通の友達のドイツ兵士の子供キットを何も言わずに預かる心優しいハンサムガイ、ドーシーの存在を忘れてはいけない。
ここでひとつ重要なアイテムを忘れることはできない。
TALES FROM SHAKESPEARE
BY CHARLES & MARY LAMB
Illustrated by ARTHUR RACKHAM
イギリスを代表するエッセイスト。その本が、なぜ彼が彼女に送ってもらうことを頼んだのか? それがわかると冷徹なものでも多少、胸が熱くなるものを感じずにはおれない。
When I was three, I was hardly me.
When I was four, I was not much more.
When I was five, I was just.......
Alive. Yes.........alive.
But now I am six, I'm as cl.....-Cle-ver(詰まりながら).......
clever as clever.
So, I think I'll be six now for.....
-Ever and ever.
Bravo! パチパチ
映画について特化しているサイト、RogerEbert.comによると「映画のアイデアは、もっと挑戦的にもっと挑発的に向上させることができたに違いないが、映画の主な狙いが、空想の世界に置いているところである。」130年前に創刊されたオーナーが中華系アメリカ人の新聞社、Los Angeles Timesの記事「保守的でしかもどこか懐かしいエンタティメント、しかも風光めいびな眺望が溢れるロマンチックなドラマ、そして私たちが関わっていくのに十分な謎を含んだひたむきな魅力。」約160年前に創刊された新聞紙、London Evening Standardによると「十二分にたっぷりと撮影された、エレガントで魅力的な映画の大部分は、時代の鮮やかさを描写するためにそのタイトルのやや感情的ともいえる陽気さが邪魔されることを防いでいる...」
批評家からも視聴者からも高い支持を受けている本作。ラブロマンスが好みの方は、とにかく嫌みの微塵も感じさせない映画作りがされているので一見の価値があると個人的には思っている。
この映画は不思議な映画で、いつもの簡単に人を痛めつける酷いドイツ兵士ではなく、戦争中としては、至極あたりまえな行動をとっているもので、あからさまに残虐と思える内容は、あくまでも手紙での伝文だけに留まっていて、ゴアな表現の映像はほとんど出てこないので、ある意味、安心して観ることのできる映画と言える。