世界の涯ての鼓動のレビュー・感想・評価
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生と死を深く考えさせる知的なサスペンス
巨匠ヴィム・ヴェンダースに、共に演技派のジェームズ・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルとくれば、期待も高まるというもの。小説の映画化で、生命の起源を求めて潜水艇で深海を調査する女性生物学者と、ISに拉致監禁されて死の淵に立つ英スパイ、2人がそれぞれ世界の果てで互いを想う。生と死のコントラストが全編で強調され、ノルマンディー海岸の絶景も運命的な愛を盛り上げる。
ただ、離れ離れの2人が海辺のホテルでの5日間の記憶を反芻するという構成で、長めのフラッシュバックが多用されるため、どうにも流れが滞る。中盤をじっくりやり過ぎて、終盤にばたばたと物事が進展する印象だ。生と死の哲学的な探求、知的な美男美女の運命的な恋愛、極限状況に置かれるエキスパートといった、強度のある題材が、相乗効果をもたらすまでには至らなかった。シェフも食材も一流なのに、仕上がりがいまいちな料理のようで惜しい。
ヴェンダースらしい特殊な距離感で描くラブストーリー
ヴィム・ヴェンダースといえば、「ベルリン天使の詩」の頃から平面的なだけではなく、天使の視点を用いてカメラを上空にまで移動させながら街や人々の日常を描き出していたのが特徴的だった。また近年は3D技術にこだわりを見せていたのも記憶に新しい。
そんな「空間」にこだわるヴェンダースが紡ぐラブストーリーなだけに、描き方は単純ではない。ここでは恋人同士がただ向かい合って愛し合うという構図を超えて、会いたいのに会えない二人がそれぞれの使命や任務のもとで命を賭ける姿が描かれる。つまり、ここでは平面的な距離に加えて、諜報員役のマカヴォイがテロ組織の中枢へと潜入する状況や、海洋生物学者役のビカンダーが海洋深くへ潜行する状況などが相まって、ヴェンダースらしい空間設計が織り成されていくのだ。
一見すると小さな映画ではあるものの、こんな特殊な物語を映像として成立させるヴェンダースにますます興味がわく一作である。
綺麗な景色
世界観や綺麗な景色は素晴らしかった。
序盤の2人の掛け合いなどはかなり評価は良かったです。
それぞれの2人の個別行動になってからは、いまいちな感じで何を言いたかったの理解できなかったのがマイナス点です。
涯ての景色
知的すぎるふたり、かと思えば
ひとたび恋に落ちたら
重い任務を抱えているにも関わらず
仕事も手につかず帰りたい…となる
生と死の淵に置かれた人間の本能か…
地球の涯て感が映像に反映されている
とてもエキゾチックなドラマ
最初はヴィムヴェンダースのものとは思えなかったけど
一連のこだわりは感じられる
危機感と諦観
"Until the end of the world" が 「夢の涯てまでも」、"Submergence" が「世界の果ての鼓動」。ふたつの邦題があまりにも似ているので観に来た。『世界の果ての通学路』もあったな。タイトルっていうのは、ついつい似てしまうんだな。なぜ◯◯は◯◯なのか。なぜ黒木華は蒼井優なのか。なぜ杏里は悲しみが止まらないのか。
「夢の涯てまでも」は公開当時あまり評判がよくなかったけれども、私は割と好きだった。素っ頓狂だったけれどフィクションに御都合主義はあるものだし、市場に出すために削ったシーンもあったのだろうし、逆にそれが故にどうとでも観ることができるところが好きだった。
サントラもヘビロテだった。参加するミュージシャンが雑多甚だしく、サウンドトラックらしき通奏低音みたいなものはまるでなく、監督の好みでしかもつながりのある80年代のミュージシャンに片っ端から声をかけましたって感じが好きだった。
この「世界の果ての鼓動」も評判は芳しくないようだけれど、割と好きだ。「夢の涯てまでも」より映画らしい。
この作品を観ると、日本はすでに相当マズいとか東アジアがカオスとか、ヨーロッパから見たら北極の温暖化にも及ばないことを実感する。
この危機感と諦観、それでもの希望、日本にいるとなかなか感じ取れない。日本でだっておよそ 30年前「悪魔の詩」の訳者が殺害されているのに。ISにジャーナリストが殺害されているのに。
美しい風景と美男美女🥰
とにかく景色がキレイ。2人が出会った海も砂浜も。ホテルも決して新しい訳ではないけれど落ち着いた雰囲気といい、庭の木々、家具、全てに趣があって美しい。そして何よりダニーも美女、ジェームスも美男。
束の間のバカンスを楽しむキレイなラブストーリー、その後はそれぞれの任務が。ダニーは研究の為に海底の調査に、海底でハプニングもあり命の危機も味わう。ジェームスもソマリアにテロを阻止するという命懸けの任務に向かう。
2人ともそんな大変な状況で、普通は愛だの恋だの言っちゃあいられない💦でもこの映画はあくまでキレイにラストに向かうのです。(ジェームスの囚われてる状況や住民の様子など鬼気迫る場面もあったけど)
ダニーが1度無理を言って、1週間ほど船🚢を降りて向かったフェロー諸島、絶景でした。
内容よりも風景を楽しむ映画かな!
海がきれい
時系列があちこち飛ぶのですが、ほぼそれぞれの回想みたいな扱い。諜報員の通信手段も派手ではないがスマホを使ってのやり取り。50m以内ならば安全という通信システムがなんだかリアルでした。
諜報員なので職業は必ず偽るというスパイの恋。ヨーロッパでテロが多発しているので、ダニーを帰したくないという気持ちも働くし、想像ではあるけど、自らがソマリアにいるテロ組織のリーダーを倒せばいいんだと危険な任務に臨むジェームズ。しかし、あっけなく拘束され、水道源を確保するための技術屋だと偽りとおす。
生物数学者というのも初めて聞いたけど、マントルに近い深海の生物を調べることらしい。有人潜水艦での恐怖。壁が破損したらどうなる?ヨーロッパで一機しかないから助けは来られないのだ。まさに死に対する恐怖が付きまとう研究職なのだ。
恐怖は諜報員も同じ。薄汚い地下の一室に閉じ込められたジェームズは、スパイ映画でもおなじみの死にいつも直面している。海岸で銃殺されそうになった時は覚悟していたこともうかがえる。
そんな二人の状況。水という共通点があるにはあるが、海はすべて繋がっていることを感じさせる絶妙なショットで締めくくる。地球上で生物が誕生した大昔からずっと生命が繋がっていたのだろう。
・好きな台詞。
「潜水艦といえば黄色だろ?」「もちろん、そうよ」
「うんこ漏らした」
マカヴォイじゃなくてジハード
ヴィム・ベンダースという監督をよく調べてから観れば良かった!
とにかくフツーじゃない。
斜めとか、そんなフツーじゃなく、どう考えればこんな演出になるのさと酒でも交えて話を聞きたいくらい、とにかく、変だ。
生涯を実感した主役2人の出会いや、相手の依存度、輝かしい5日間の演出など、コッテコテのラブロマンスを見慣れている、中身厨二病の私には、
どうも違和感だらけで納得がいかない。
しかもふたを開けてみれば、ジハードがメインですよ。
海洋数学なんて小難しいものが、ちょいちょい入ってくるけれど、
彼女の不安であるとか葛藤であるとか、マカヴォイが相手のカットバックは、見ていて休憩時間としか思えなかった。
とにかくマカヴォイは相変わらずの天才ぶりで、
終始、彼の生存にだけ集中してしまう。
ところどころ、刺さる台詞が多く、
考えさせられるテーマが多く残った。
監督の表現云々よりも、
マカヴォイ凄かったなーが残る作品。
あれ?
ドキュメンタリー以外でヴェンダースの作品を鑑賞するのは、「アメリカ、家族のいる風景」以来、実に十数年振り。あれ?こんなに中だるみする監督だったかな?題材は良いのかもしれませんが、心に響くものがありませんでした。
俺はこの映画のターゲットじゃ無かったと、気づいた時にはあとの祭り。
アリシアが相変わらずチャーミングだった。多国籍合作映画に名画無し。って事は無いけど打率が低いのは間違いナスだす。ちなみに日本からは、ウィスキーとゴジラが参戦した模様。
取り敢えずツッコミ無しで堪えてましたが、スコットランド系英国人に日本のウィスキー勧めるとか嫌味としか思えないとか、自爆テロ用の爆発装置のアセンブリが、潮風に晒されるビーチだなんて!などなど。
ナンカ色々と気取ってるけど穴だらけちゃう?
コレを言うと話が終わるかも知れませんが、熱水噴出孔周りの生物探査って、有人潜水なんだ…
大人の“セカイ系”。
『世界の涯ての鼓動』っていう邦題がとっても良くて、それに印象が引っ張られてるのかもしれないけど、“世界の果て”感の両極の対比がとっても沁みる映画だったなー。
“世界の果て”というのは、“極地”というニュアンスよりは“人生が終わる場所”という感じ。
良い方の“世界の果て”は、前半にしっとりと描かれるリゾートホテルの日々。狂人でも超人でもない普通のジェームズ・マカヴォイと、アンドロイドでも冒険家でもない普通のアリシア・ビカンダーが普通に出会って、普通の恋をするの。
物語的には特に面白みはないんだけど、それがむしろ大事で、「帰りたいところ」として観客の心に浸透する。
「海辺」という水際も、“世界の果て”の舞台装置になっていて、そこで話す「人間の体の大部分は水でできている」っていうのも、「そもそも人間は“水際”な存在」という暗示もあるのかな。
物語の後半はそれぞれに、“悪い方の世界の果て”でお互いの存在を心の糧に、生き延びようと強く思う。
マカヴォイは、テロ最前線とソマリアの海の水際で、
アリシア・ビカンダーは、深海と海底の水際で。
世界に対して自分の成すべきことを、それぞれの世界の果てで、限界を超えて成し遂げようとしてる。でもその勇気の源泉になっているのは、「生きてまた愛する人に会いたい」という私的な意志だ。
『天気の子』が語ることに近い、大人の“セカイ系”の話だったように思えるのは、やっぱり観たばかりの印象に引っ張られているのかな・・・。
ただのラブストーリーでは無い
ポスターとムビチケの写真のイメージから爽やかなラブストーリーと勝手思い混んでいましたが、ただのラブストーリーでは無い…生物数学者とMI6の謀報員の恋愛も描かれていますが、テロ、戦争とテーマは深い、過酷な状況に置かれた恋人同士、離れ離れになりお互いを思う深い愛と見応えありの作品でしたが、個人的にはハマらずの作品。キャストが豪華なので期待しすぎた感がありました。
ヴィム・ベンダースを堪能
「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」が好きな私としてはヴィム・ベンダース監督作品と言うことで期待。なんか懐かしい名前。
ミニシアター系の臭いがぷんぷん立ちこめるこの作品。とっても好きです。人によってはめっちゃ飽きるだろうな~なんて考えながら、私にとっては素晴らしい時間を過ごせた作品。
原題は「Submergence」で 深く潜る 的な意味合いがある。このままでは伝わらない。ということで付けたのだろう邦題がとっても素敵。珍しく良い邦題を付けたなぁと感心。
フランスの海辺のホテルで出会ったふたりの男女の愛の物語。濃密な時間から一転グリーンランドと南ソマリアという地球の対極へ。それも男は地の果て女は海の底という物理的な対極である。
女は宇宙の果ての生物と海底の果ての生物の結びつきを求め、男は宗教という精神的な対極で壮絶な体験をする。
世界の果て、「生」と「死」の狭間で生きる事への鼓動を感じる。愛という鼓動を求める。
ラストのその後、どうなったのか、それは見た者だけが感じ取れる特権。まさにヴィム・ベンダース的完結。素晴らしい。
世にも麗しき大人の恋の物語
人が人間性を試されるのは極限状況にあるときである。だから多くの物語の主人公は、普段の生活では体験しない特別の状況に置かれる。日頃どれだけ見栄を張ったり自分を飾っていても、究極の決断を迫られる場面ではその人間の本性が出る。主人公の決断によっては、読者や観客は感動したり興奮したり、時にはがっかりする。
本作品の主人公ふたりはMI6の諜報員と超深海を調査する数学者で、既に極限状況にあると言っていい。危険で重大な任務に向かう前の束の間の休息は、張り詰めた気持ちと孤独を癒やすためだった筈だが、同じような精神状態の異性と出逢ってしまったことで、あっという間に恋に落ちる。出逢いは偶然だが惹かれ合うのは必然だ。
夢のような5日間を過ごしたあと、二人が直面したのはそれぞれに厳しい現実である。特に諜報員ジェームズはソマリアに潜入するのだ。銃や火器による殺人や暴力が日常的におおっぴらに行なわれて、誰も取り締まらない国である。世界をよくするための任務であるという自覚がよほど強烈でなければ、潜入しようなどとは思わない。その熱意はホテルで過ごしているシーンの中で予め表現されていて、この人はソマリアに行くのだろうなと納得できる。
一方の数学者ダニーは、超深海への熱が治まらない。生命のよって来る根源の場所はどこなのか、調べずにいられない。その気持もホテルで過ごすシーンに表現されている。心に熱い思いを抱えた大人同士である。しかしその熱を若者のように直接ぶつけ合うのではなく、平静な表情の後ろに隠して、時々触れる指先から互いに感じ取る。世にも麗しき大人の恋の物語だ。
思い出すキーワードはたくさんある。テレビを見ている家に手榴弾、アッラーワクバル、塩田、西経2度北緯74度、宗教に強制があってはならない、マントルに生命、超深海、捕虜、ジハード、信じる能力、ネイチャー誌、ノルマンディー上陸作戦のときと思しき巨大コンクリートのオブジェ、そして処刑される女性と撃たれる子供、無慈悲なジハード戦士の意外な知性。
諜報員ジェームズに降りかかる凄絶な現実は、人類と共同体の不幸を象徴するかのようだ。襲いくる狂気を、我らはどうやって生き延びるのか。その問いかけの延長上に、人類及び生物はどこから来たのか、現れたことに何の意味があるのかを探るダニーの探究心がある。
親水性という言葉には様々な意味があるが、水が人間を落ち着かせる意味もある。それは生物が水から生じたことを示すのかもしれない。原題の意味はそのあたりにありそうだ。時間的にも空間的にも世界観が広がっていく、スケールの大きな作品だと思う。
ラブストーリーとしては、面白く観れるといえばそうなんだけれど、ただ...
ラブストーリーとしては、面白く観れるといえばそうなんだけれど、ただMI-6のミッションとか、深海の話とか、なんとなく浅くて、ふたりの出会いとかの描き方に比べるとだいぶざっくり
ただ、それらを細かく描くと、今度はふたりの話が浅くなりそうで、きっとこの映画はこれでいいのだろうと思った
ふたりの出会う海辺と、ホテル、そしてその日々の描き方は、美しいなあと思えた
ノルマンディーの白い砂浜 エメラルドグリーン、深色ブルーの波 ...
ノルマンディーの白い砂浜
エメラルドグリーン、深色ブルーの波
美しき海岸線
小ぶりのラウンジ
暖炉に焚かれるゆたかな火
木の香り漂う造りのヴィラの様なホテル
生物数学者とMI6諜報員
マカヴォイの青い瞳
アリシアのブラウンの瞳
二人の語り合う瞳の美しさ
ソマリアの現実と深海の神秘
軽んじられる命もあれば
人目に触れる事は無くともたくましく
生き抜いてきた生命もある
たとえ光合成をしていないと思われても
そしてすべての“生”を繋げる“海”
そんな雄大な背景を讃えながら
“美しさ”を魅せてくれる素敵な作品でした
今思えば、中学か高校の時に公開されて
おしゃれだなぁと思ってただけで
ずっと観てこなかった
「パリ、テキサス」
ヴィム・ヴェンダース作品を見直さなければ!
何とロマンティックなヴェンダースが!
ヴィム・ヴェンダース×アリシア・ヴィキャンデル×ジェームズ・マカヴォイ。
私にとってヴェンダースは大切な監督の一人。なので彼の作品を観ないという選択肢はない。
今作はエンターテイメントに振れた作品。別々の道を歩んできた二人が恋をし、お互いが大切な人となるも、それぞれの使命を全うするために……
極限状態に置かれ死と直面したときに思うのは大切な人。ヴェンダースのフィルモグラフィにこんなロマンティックな作品が加わるなんて素敵じゃないですか。
絶景に息を呑み、ヴィキャンデルの少年のような笑顔と肢体に萌える。
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