「世界には知らないことが多すぎる。海の底も、人の住む世の中も。」世界の涯ての鼓動 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
世界には知らないことが多すぎる。海の底も、人の住む世の中も。
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で?ふたりは?と、あのラストに物足りなさを感じるだろう。成果を上げたジェームスのそのあとはいいとして、会えないとしても、ずっと待たされたままのダニーの気持ちのフォローがないことに。
だけど、そこを想像で補えるための、休暇の数日間の濃密さなのだ。二人だけに通じ合えた感情は、愛情だけではなく、知性や人間性や思想までも。つまり、お互いのすべて。一人が寂しいだけなら、ダニーの周りには男はいくらでもいる。ダニーにとって、ようやく見つけた相手がジェームスであり、彼の真実の姿が何者かは別の問題。ジェームスにとっても同じなのだろう。拘束されてるときに医者が「教養があるのは君くらいだ」と言って話し相手になるが、同じ心情なんだと思う。
かたやテロ組織のなかで、かたや未開の深海のなかで、極限の心理にさらされながら、お互いを求め、支えとする心境に共感が得られるとき、あの美しい風景がよみがえってくる。
たぶんラストのあのブチギリは、結局ふたりがどれだけ愛し合おうと、結ばれることがない運命を暗示しているのか。
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