「生と死を深く考えさせる知的なサスペンス」世界の涯ての鼓動 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
生と死を深く考えさせる知的なサスペンス
巨匠ヴィム・ヴェンダースに、共に演技派のジェームズ・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルとくれば、期待も高まるというもの。小説の映画化で、生命の起源を求めて潜水艇で深海を調査する女性生物学者と、ISに拉致監禁されて死の淵に立つ英スパイ、2人がそれぞれ世界の果てで互いを想う。生と死のコントラストが全編で強調され、ノルマンディー海岸の絶景も運命的な愛を盛り上げる。
ただ、離れ離れの2人が海辺のホテルでの5日間の記憶を反芻するという構成で、長めのフラッシュバックが多用されるため、どうにも流れが滞る。中盤をじっくりやり過ぎて、終盤にばたばたと物事が進展する印象だ。生と死の哲学的な探求、知的な美男美女の運命的な恋愛、極限状況に置かれるエキスパートといった、強度のある題材が、相乗効果をもたらすまでには至らなかった。シェフも食材も一流なのに、仕上がりがいまいちな料理のようで惜しい。
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