「水に溺れて、水を欲する、2人の恋。」世界の涯ての鼓動 ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
水に溺れて、水を欲する、2人の恋。
なかなか深い映画でした。
原題は『水没』という意味らしい…。
なるほど、惹かれあった男女2人が、命の危険を冒しつつ水の底に沈んでいく様子が印象的。
独身を貫いていた2人が、旅先で運命的な出会いをし、一生忘れられない恋をするという始まり…。
このまま一生を添い遂げたいと思う2人だけど…。
お互い命を懸けた仕事が目の前に待っているから、これ以上は一緒にいられないところが辛い…。
たった5日間だけの大恋愛を終えて、泣く泣くそれぞれが仕事に向かう。
1人は深海の世界へ。
1人はソマリアの戦地へ。
状況は違っても、互いに命の危険を感じつつお互いを想っている。
深海の世界に沈む彼女は、このまま海の底に沈みっぱなしの運命が待ち受けているかもしれない。
対するソマリアの男は、十字軍に捕まり、いつ殺されるかわからない過酷な状況の中、彼女を思い出している。
カラカラに乾いた砂漠と、壮大な海に囲まれたソマリアで、恐怖に怯える人々に幸福をもたらすのは、自由に使える水だと悟った彼。
対する彼女は、海底の底から生まれる火山の噴出から、生命の誕生と死を壮大な海の底で感じている。
遠く離れた地で、互いが命の源に水の存在を感じているこの情景が、不思議な気持ちをもたらしている…。
きっと、人間の体の80%は水出てきているからこそ、水に生命力的なものを感じるのかもしれない。
人は水とともに生き、水とともに死ぬという、水はなくてはならない存在であり続ける。
運命的に出会った2人が水を通じて、互いを想いながら命そのものを感じている、そんな雰囲気が静かに流れ出ているような映画でした。
この結末がどうなるのか…。
観た人によって感じ方や考え方が分かれそうですが…。
私は、せっかく運命的に出会えた2人なのだから、結ばれてほしいと願わずには入られません。
2人の運命は神のみぞ知る、なかなか独創的な映画を堪能しました。