「ゴリゴリ“スプラッター”」脂肪の塊 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴリゴリ“スプラッター”
ガチのゴア表現満載のホラー作品である。前回の監督作品に強く興味を抱いたので、次回作である今作に多大なる期待を持って鑑賞したのだが・・・
構成とすれば、結果を先に披露し、その原因を後から振り返るという常套手段のシークエンス群である。なので、冒頭からガンガン殺人が行なわれ、その演出効果も、映像カラーリングも“青”を強調したり、ずっと流れる重低音のBGM等々、過剰さがてんこ盛りの造りなのである。バラバラ死体の出来も、頭こそみせてはいないが、相当細部まで作り込まれたリアリティを感じる。
そう、このゴア表現を徹底的に追求した技術先行型の作品なのである。なので、今作のストーリー部分は前作ほど煮詰めていない。単純に言えば、同性愛の片方の女がバイでもあり、DV男と付合うが、暴力をふるわれ、逆に殺してしまう。嘗てのDV男と付合っていた女のストーカーが、殺してバラバラにして埋めた男の死体を掘り起こし、ショックの余り記憶を消失してしまったバイの女に事実をみせ、またしてもその女はストーカーを殺す。結局この女の恋人である女と焼身自殺をするという、まぁハッキリ言ってだれも救われない闇要素だけの展開である。理不尽要素がないため、誰かに感情移入する部分もなく、唯々不合理に人が殺されるだけであり、濡れ場でも決して下着は脱がない“鉄壁”演出に残念ながら白けるだけである。そしてやたらと出てくるオフィスシーンの無意味さ。ストーリーの本線に一つも絡まない日常性を意図したかったのだろうが、緩急の付け方が響いてこないのが正直なところである。
あれだけ登場人物のいろいろな頭を打付けられても、演技や演出がないのか、しっかりと次の行動に移るというリアリティの無さや、それぞれの背景の希薄さ(男の母親が潔癖症ということでの家庭内暴力は、せめてその回想シーンを用意できなかったのか)等、はっきりとドラマ性をバッサリ切って、効果に特化した印象を強く受け止めた。
これは作品とは関係ないが、作品の一つの山場で、機器の不具合か映像のストップとスキップが発生して、益々映像に対する興味が萎んでいくのを隠せない。
折角才能に富んだ監督である筈なのに、今作は運にも見放されて、“残念”と言わざるを得ない内容であった。