「【高3、夏。2020夏。夏の記憶】」夏、至るころ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【高3、夏。2020夏。夏の記憶】
たくさんの人の記憶を呼び起こすような作品だと思う。
高3の夏。
特に、事件などあったわけではない。
しかし、自分は何者なのか、一体これからどうすべきなのか。つい先を急いでしまうタイガ、つい立ち止まってしまう翔、そして、戻ろうとする都の、それぞれの気持ち、そして、その対比や葛藤が、実は、僕達一人一人が経験した全てのようで、それは何か選択を迫られた夏の記憶として蘇る。
高3の夏。
僕は、秋にも大会があって、陸上競技の練習を続けていた。
受験は夏が勝負と言われても、ピンとこない自分がいた。
練習休みの日に、彼女と海に出かけたのが、唯一の楽しい思い出だ。
後で、引き出しにしまっていた彼女のビキニの写真が母親に見つかって、変な目で見られた記憶もある。
2020年夏。
コロナ。時間が出来た。
昔、通っていたパーソナルトレーニングジムのトレーナーに、もし高校時代、僕がこのジムに通っていたら、もっと早く走れるように出来たと言われたことを思い出して、その時真剣に考えていなかったメニューを思い出しながら、毎日のようにトレーニングした。
普段からの身体の動きが変わった。
トレーナーの言っている意味が分かった。
多分、運動全般に良い影響を及ぼすと思った。
別に、高校時代にどうすべきだったとか後悔などない。
ただ、身体の動き自体が変わったということが発見出来て嬉しいのだ。
高3の夏、がむしゃらに練習していた自分と、2020年夏の自分の取り組みが、どこかでつながって弾けるような気がした。
翔がバックパッカーとして外国に旅立とうとする場面がある。
バックパッカー経験者として言いたい。
これをしたからといって、正解を導き出せるわけではない。
ただ、その経験をかみしめながら、いつか、ハッとすることがあるのだ。
高3の夏。
急ぐ気持ち、立ち止まる気持ち、後戻りしたくなる気持ち。
全て、僕達の気持ちだ。
そして、僕達の記憶だ。
もっと注目されても良い作品のように思う。