「緊迫感あり、余韻あり、いい映画だった」工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 mittyさんの映画レビュー(感想・評価)
緊迫感あり、余韻あり、いい映画だった
北朝鮮への潜入を韓国政府から命じられて工作員となったパク・ソギョン。コードネームは黒金星(ブラック・ヴィーナス)。実在した人物で、実話に基づいた映画で、1990年代の朝鮮半島が舞台。
潜入といっても、北の権力層との接触にこぎつけるまでが、そらまあ大変で・・・。なんせ、北朝鮮ですから。盗聴、尾行、自白剤など、スパイの世界では日常茶飯事。ずっと、はらはらドキドキ。手に汗握りながら、見ました。政治、世界情勢に疎い自分は、ちょこちょこメモを取りながら見ました。こんな凄い映画を作ってしまうなんて、さすが韓国ですね。それにしても、北朝鮮がこの映画を見ても大丈夫なん?と心配なんですけど。
とうとう、将軍様の別荘にまで潜入してしまうのですが、車で平壌入りするところも緊迫感があり・・・これって前に感じたことあるドキドキ感?と思ったら、映画『ボーダーライン』で、麻薬カルテルのメキシコの国境を越えるところに似ていたなと思いました。
主役のファン・ジョンミン、口達者な商人の軽さと工作員の秘めたる困惑が同時にまじった演技、本当によかったです。冷徹な軍人気質のチョン課長(チュ・ジフン)も上手かったですねえ。自白剤を注射されたあと、無意識の状態で尋問されるシーンも見どころかもしれません。本人そっくりな金正日が登場してしまうところは驚きました。
最後、リ所長がパクのために通行証を用意したところは胸が詰まってしまいました。二人の間には絆が芽生えていたんですね。その五年後だったか、南北の広告撮影が実現し、パクとリ室長が、互いの贈り物(腕時計とタイピン)を遠くから、見せ合うところも、どこか切なくて。ラストがこんな感じだったので、スパイ映画とはいえ、静かな余韻が残っています。(TT)
実話に基づいているといえども、どこまでが実話なのかはよくわかりませんが、大統領選挙前に南が北に軍事挑発を誘発したというのは本当だったそうです。実在の黒金星(パク・チェソさん)自身、この映画を見たそうで、「見たスパイ映画の中で最も事実に近い」と言ったそうです。
<備忘録>
南★北に潜入する工作員:パク・ソギョン(ファン・ジョンミン)
南★国家安全企画部の室長:チェ・ハクソン(チョ・ジヌン)
北★対外経済委員会の所長:リ・ミョンウン(イ・ソンミン)
北★国家安全保衛部課長:チョン・ムテク(チュ・ジフン)
北★金正日総書記:キム・ジョンイル(キ・ジュボン)
2010年 黒金星、国家保安法違反で緊急逮捕
2016年 黒金星、6年の服役を終え、5月に出所