「人間ってすごい」工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
人間ってすごい
北朝鮮が核を持っているのか調査した韓国スパイの話なの。スパイ物だから「あ、バレる、バレる。どうすんの? どうする?」っていうだけでも観てて面白いのね。
「どんな体制にいても人間って同じだな」って思うのね。北朝鮮の人も韓国の人も「出世したい」「金を手にしたい」と思ってる。主人公は、北朝鮮側のそこをうまく突いて入り込んでくのね。
それで「国家って、権力ってなんだろう?」とやっぱり思うの。国のためを思って色々やるんだけど、「何人かを犠牲にしてまで、そこまでして、国って守るものなの?」と思っちゃうね。権力を持った人も「国のために」ってやってるうちは、まだ良いんだけど、保身に走ったときに駄目になる。その人たちだって崇高な目的に殉じようと思ってただろうに、人間の弱さだね。
主人公の上司の描き方もうまいんだよね。上司も「この命令はなんのため?」と思って上に歯向かってみるんだけど、機構の中でどうしようもない。それで主人公に対しては、機構そのものとして指示を出す。だから主人公と上司のやり取りになると「主人公の言ってることは上司も解ってんだよ。どうしようもないんだよ」って、機構の理不尽さを感じるのね。
そんな状況の中で、再び「人間は変わらない」ってのが違う形で出てくんの。主人公と北朝鮮の所長ね。この二人は体制の違いを超えて「北朝鮮の人民をなんとかしなきゃ」っていうところで理解しあう。それで、互いに助けんのね。特に、所長は、自らの危険を顧みず助ける。ここが、凄いなって思った。
10年ぶりの再会で、二人がロレックスとタイピンを見せ合うところは声あげて泣きそうだった。
権力について描く、韓国お得意の主題で、エンタメ要素もきちんと抑えていて、楽しく観ながら色々と思う良い映画だから観た方がいいよ。