「もがく映画」転がるビー玉 やきすこぶさんの映画レビュー(感想・評価)
もがく映画
この映画を、「面白いか?」と聞かれたら、自信を持って面白いと答えられないかもしれません。
この映画、大きな事件は起こらないんですよね。
いや、住んでる場所を追い出されるというのは、大事件でしょうけど。
だけど、人生における決断を迫られるポイントの一つという感じで、映画全体がその様な状況でもがく若者を描いているので、それだけが大事件といった感じではないんですね。
なので、この映画は大きな波が無いんですよ。
小さな波が続いている間に、映画が終わってしまう感じで。
それでも、小さな波でも打ち寄せられる側は微妙に変化する様に、主人公たちも悩みもがき、少しずつ変化していくんですね。
ただ、この映画の場合は、そこまで明確な変化は見せてくれないんですけど。
だからこそ、少しずつ変化を見せる主人公たちを演じる役者さんが、重要になってくると思うんです。
そう言った意味では、萩原さんと吉川さんをキャスティング出来た事が大きかったんじゃないかな。
そこに、今泉さんが上手く嵌まる事で、三人の表情もさることながら、醸し出す距離感みたいな物が良かったと思います。
それから、三人に絡む脇の役者さん達も良いんです。
人物像が掘り下げられているわけではないのですが、各シーンの表情が良いから、向こう側に有る物を想像したくなるんですよね。
それと、舞台が渋谷なので人が多いですね。
なので、背景に日常を過ごす人々がいるシーンが、多くなっていたかも。
これ、上手いコントラストじゃないでしょうか。
若い時独特のもがき苦しみ、周りの日常の人々から取り残される様な感覚を、上手く出せていた気がします。
ある程度年を取ると、その日常の人々にも抱えている物が有るのが、分かってくるのですが。
やっぱり、この映画面白いかも。