「まさに"Your Story"」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー リティさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに"Your Story"
以下はあくまで私個人の解釈。
すべてのゲームの宿敵は、それがゲームであるという事実なのだ。
ドラクエを熱心にプレイしていた人でも一度くらい「所詮はゲームだ」と頭をよぎったことはないだろうか。ドラクエをプレイせず傍目に見ていた人も、「所詮ゲームなのに」と冷めた目で見たことはないだろうか。
この映画はドラクエをプレイしていた人はもちろん、ほとんどプレイしていない人も対象として作られている。「ただのゲームである」という事実は、実際にプレイしていたかどうかに関わらず、すべての人々に共通する要素である。
まず、ドラクエをほとんど知らなかった人は余計な知識がない分純粋に冒険譚として楽しむことができるだろう。実際、VFXを駆使した美麗な映像は迫力があったし、少し駆け足な展開もむしろテンポよく感じられた。オリジナルと乖離があったとしても(そもそも知らないので)まったく問題ないだろう。むしろ、こんな熱い世界があったのだと感銘を受けた人も少なくないのではないか。
一方、かつて実際にプレイしていた人は最後のシーンに困惑するかもしれない。それまでの手に汗握る物語を全否定し、「ただのゲーム」という現実を突き付け、「大人になれ」と言い放つラスボスの登場である。しかしよく考えてみると、ただのゲームであるという事実は、それこそドラクエをプレイしていた当時に向き合っていたはずの「敵」ではないか。ゲームをすることに何ら後ろめたさもない人は珍しいと思う。むしろ、ただのゲームとわかっていながらなお熱中していたのであって、そこには熱中させるだけの何かがあったはずである。彼らはこのことに対しどのように折り合いをつけてきたのだろうか。本当のラスボスはクリアした後に現れる現実なのではないか。
かつて熱中した冒険も、現実との折衝も、その後の心理的成長も、すべてはそれぞれの心の中にある。それこそまぎれもない"Your Story"なのだ。