「作品のプロデュース」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー stさんの映画レビュー(感想・評価)
作品のプロデュース
------前置き-----
僕は、ドラクエVは何度かプレイしましたが、ドラクエファンかどうかと言われるとわかりません。そもそも「ドラクエファン」ってなんだろう。ドラクエは好きです。
また、「エンディングが賛否両論」という事前情報(具体的にどんなエンディングかは知らない)があった上で鑑賞しました。
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ドラクエVのストーリーで特に好きなポイントは、「主人公が『勇者』じゃない」という部分です。
今作品は、そこを前面に打ち出していた(作品の主題と言ってもいい)ので、楽しく鑑賞できました。
息子が天空のつるぎを鞘から引き抜くシーン
ビアンカが酒場でプロポーズされて顔を赤らめるシーン
最終決戦でヘンリー達が加勢に来るシーン
これらは、ゲームにはなかったシーンですが、映画ならではのダイナミックかつ丁寧な演出がなされていて、特に印象に残ったシーンです。
正直なところ、エンディング直前の例の賛否両論のシーンは、あまり印象に残っていません。
強いて言えば、シーンにもう少し長く時間を使ってもよかったかもしれませんが、ゲームに没入するのって、その世界観に惚れたからなので、ゲームのエンディングってあんまり印象に残ってないんですよね。そもそも、申し訳ないことにドラクエVのエンディングもあまり覚えてないです(笑)。そういう意味では、あれくらいでもよかったかもしれません。
ただ、エンディングについての不評の声が多いので、作品自体ではない部分で書き添えると、、、
広報(予告編、Webサイト、SNS、各種マスコミ媒体など)をもう少し丁寧にというか、
工夫を凝らしたり、仕掛けを施した方がよかったかもしれません。
僕は、エンディングが少し意表をついているらしいという情報がある上で観ましたが、
もちろんまったく知らずに観た人も多いでしょう。
事前情報なしだと、批判される可能性が高い演出だとはあらかじめわかるはずなので、
予告編含め、広報でそのことに触れるべきだったかもしれません。
おそらくそれだけでだいぶ印象は違ったと思います。
また、ストーリーは、かなり上手くポイントを抑えつつ凝縮されていましたが、
ドラクエVをプレイしたことがない人はさすがに付いていけないかな、と感じました。
とはいえ、あれ以上ストーリーを凝縮することも難しいと思うので、
ストーリーについても広報で補完しておくべきだったかも知れません。
このご時世、特にこの手の作品であれば、広報は非常に重要だと思います。
作品の一部とまでは言いませんが、作品を形成するひとつの要素とは言えるでしょう。
広報は、ただ広く報せればいいというだけではありません。
作品をよりよいものにするために上手く報せる必要があります。
広報は人任せにしてしまいがちな要素ではありますが、
広報にもうまい演出をすべきだったかもしれませんね。
それは監督ではなく、プロデューサー(製作)の役割ではありますが。
(公式サイトでプロデューサーが一切紹介されていないのも気になりました)
悲しみや怒りを覚えたという声は、けっして虚言ではないと思います。
作品自体はよいものになっているのに、作品のプロデュースという点が残念に思いました。
ついでに言うと、「ユア・ストーリー」というタイトルもよくなかったかもしれません。
おそらく「あなたたち」っていう「your」だと思いますが、大抵の人は「あなた」と受け止めてしまうと思いますので。
「ユア・ストーリー」よりは、まだ「マイ・ストーリー」の方が解釈の幅が広くなりますし、作品自体にも似合っていたかもしれません。
(「マイ・ストーリー」もいまいちではありますが)