「ドラクエファンならまあまあ楽しめる。しかし……」ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 平 和男さんの映画レビュー(感想・評価)
ドラクエファンならまあまあ楽しめる。しかし……
私は、ドラクエ6までは、主人公と味方キャラ全員を最高レベルになる程度にはやりこんだ事がある。
その後諸事情につきゲームから遠ざからずを得ず、最近のドラクエをやっていない。
しかしまあ、私も一応「ドラクエファン」の範疇に入るはずだ。
その私から見て、本作はまあまあ楽しめた。
わざわざ映画館に足を運んで金を払う分の価値は有った。
(自分の中の5段階評価で2.5未満の映画なら、レビューを書く気にすらならない。
レビューを書く事によって得られる主観的な効用とレビューに費やす時間とが、釣り合わないからだ。
5段階評価で☆1つすらも付けたくないほどのクソ映画なら、むしろレビューを書くかもしれない。
「時間とカネを無駄にした!」という、自分以外の被害者を減らすために)
さて、本作を見終わった後、気になった箇所やいくらかモヤモヤしたものが残った。
それらを箇条書きにして列挙する。
(1) 雰囲気がディズニー3DCG風
私は映画のレビューを書く前に、他人のレビューを見ない。
他人の意見に影響されたくないからだ。
しかしながら、「ディズニー3DCG」という点に関しては、多くの人が同様な感想をいだくのではないかと予想する。
(もっとも、ドラクエのキャラクターデザインを長年手掛けた鳥山明先生のアニメ原体験がディズニーの「101匹わんちゃん大行進」であり、鳥山先生本人が自らの作風におけるディズニーアニメの影響を述懐しているとの事なので、この点は驚くに当たらないのかも知れない)
(2) キャラクターの心理描写がやや不自然、あるいはステレオタイプ
ドラクエ5をベースにした話を高々2時間に圧縮した事による弊害かもしれない。
しかし、それは観客側からの擁護論としてなら言っても良いが、仮に製作側の人間が言ったとしたら、自らの力量不足を白状したも同然と言えるだろう。
本作に関して言えば、
「少年期の主人公がゲマに捕まった時、もっと抵抗するんじゃないか?(別に魔法で金縛りにされたでもなく、ただ片腕で持ち上げられていただけだったし)」とか、
「あんな形で娘の婚約を反故にされたら、ルドマンはもっと怒って良いよな?」とか、
「ビアンカが主人公と惹かれ合うまでの心理描写、ちょっと端折り過ぎ」とか。
(3) 実はヴァーチャル・リアリティでした?
おそらくこの点が、本作最大の問題点だろう。
原作者の堀井雄二先生は、
「プレイ中に現実世界に引き戻されて興醒めする事が無いように」と、
「セーブ」という用語一つ取っても、
「ふっかつのじゅもん」とか「ぼうけんのしょ」とか、
気の利いた言い回しに置き換え、細心の注意を払っていたと聞き及んでいる。
その堀井先生が仮にも監修しておきながらこういうオチになってしまっているというのが、ちょっと信じ難い。
こういうオチこそ、それこそ興醒めだろう。
他のゲーム(例えば、原作で「仮想現実ネタ」が核心的役割を果たしているスターオーシャン3)の映画化なら、こういうオチもありかも知れない。
だが、本作はドラクエの映画化なのだから、はっきり言ってこういうオチは『禁じ手』ではないか?と思う。
上記の3つ以外にも、
「えー、この場面でこの選曲は、ちょいとミスマッチじゃね?」とか、
「ディズニー風の3DCGも良いけど、元祖スーファミ版ドラクエ5発売前のCMのごとく、人間キャラは実写にした方が良くね?」とか、
思う所は色々有る。
先述の通り、このレビューを書く前に他の人のレビューは見ていないが、
星の数はチラリと見てしまった(鑑賞前の時点で『2.1』)。
鑑賞前は「えー? そんなひどい出来なの?」と思ったが、
鑑賞後は「まあ、酷評する人がいるのもやむなし」と思った。
そういう所が有ったにせよ、
私は「まあまあ楽しめた」と思うので、
この映画に☆2つ半を付ける。