「極限状況での人間の本質を考えさせられる」人間の時間 AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
極限状況での人間の本質を考えさせられる
誇張された人物造形、露悪的な暴力描写、痛烈な社会批判。キム・ギドクのスタイルが今作にも継承されたが、幻想物とSFと宗教説話と不条理劇をごった煮にしたような設定は、監督のフィルモグラフィーの中でも珍しい。
退役軍艦に乗り合わせたクルーズ客と乗員らが一夜明けて迎える状況は、笑ってしまうような荒唐無稽さだ。それでも、外界から遮断された空間で、物資も限られる時、人はどんな心理状態になり、どう行動するのかのシミュレーションにはなっている。コロナショックで日本でも外国でもマスクや紙製品、食料などが品切れ、品薄になり、社会不安が広がっている。これがさらにエスカレートして集団パニックになったら…本作と重ねて考えると、かなり怖い。
リアリズムから逸脱しつつ、いかに映画として成立させられるかという前衛的な試み。万人受けする娯楽作ではないが、この異色の韓国映画に主演した藤井美菜の挑戦は大いに評価したい。
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