「Haiku boy meets Mask girl」サイダーのように言葉が湧き上がる ONAKAMAさんの映画レビュー(感想・評価)
Haiku boy meets Mask girl
去年の5月に公開予定だった本作。絵柄がすごく好みで、公開を待ち侘びていましたが、コロ助のせいで1年以上延期に。そんな中試写会に当選し、一足早く鑑賞。なんだか優越感があります。
簡単に総評しますと、とても大きな物語では無いけれど、心に響きまくりました。
物語は俳句を嗜んで、SNSにあげたりするどこにでもいる少年チェリーと、出っ歯が嫌で、暑い夏でもマスクをしているJK配信者のスマイルの2人と周りの人物のなんてことない日常を描いた作品です。自分自身、劇場アニメはたくさん観ますが、ここ数年は日常系に見えても規模の大きい作品が増えた印象があります。そんな中、至って普通を描いた今作は、普通なのに新鮮に感じました。
今作の魅力は沢山ありますが、背景や人物がとてもカラフルなところが好きです。この世の代表的な色は全部使ってるんじゃないのかと思うくらいの色彩の豊かさ。ショッピングモール、田んぼ、祭り、それらを引いて見た背景。全体的に目に優しいタッチの色遣いでもあるので、物語の一部に入り込めたような感覚になります。
人物も特別多くなく、一人一人が印象に残りやすい個性を持ち合わせています。これは声優さんの力も合わさっています。チェリー役の市川染五郎さんは、予告やCMで見た感じは大丈夫かな?と思っていましたが、本編を通して見てみると、そこまで気にならなかったです。チェリーがおどおどしたキャラというのもあり、意外とマッチしていました。スマイル役の杉咲花さんは、声がとても可愛らしいので(ただルキアの時はそれが裏目に出た)、スマイルが笑ったりする時や、照れたりする時に出す声にキュンとさせられました。脇を固める声優陣も、多種多様な役柄が溢れていて、毎秒毎秒新鮮な気持ちが味わえます。
序盤の2人の出会いの際の、ビーバーが倫理観そこそこ崩壊の暴れっぷりはこの作品でのアクション部分を担っていて、現実的なのに現実離れしたスケボーアクションはコナンにも匹敵するレベルです。画面が2分割する演出は現在では珍しくはないですが、スマホの画面風に分割するのは、ちょっとした工夫が施されており好きでした。
物語の大きなテーマは、富士山のおじいちゃんの探すレコードを見つけることです。序盤から終盤までは基本的にこの行動がメインになりますが、その中で2人が関係を深めていく感じです。高校生の青春ってこんな感じなんだな〜初々しいなぁ〜いいなぁ〜と思い観ていました笑
チェリーは引っ越すことをスマイルに言い出せずにいて、呆気なく一度は離れてしまいましたが、スマイルの配信や友人の手助けを受け、チェリーはスマイルのいるお祭り会場へと駆け出します。命の危機があるわけでもない、大切な人が危険な目に遭ってるわけでもない、それでも走るチェリーの姿は、いつの日か思い描いていた理想の自分がそこにいました。好きな人のために想いを伝える為にひた走る、なんて羨ましいんだろう。
会場に着いたチェリーが富士山さんのマイクを借りて、ただ1人花火を見ず、チェリーを見ているスマイルに向かって、俳句を交えながら告白する。何発も俳句をぶち込んでくるので笑ってしまいましたが、それでも可愛らしいなぁと思ってついにやけてしまいました。はっきりと好きと言ったあとのスマイルのマスクを外して見せた笑顔もまた素敵でした。
主題歌・挿入歌も素敵で、頭の中で何度もリピートしています。公開日にまた観に行くと思います。またひとつ大好きな作品が増えました。
"この気持ち 真っ直ぐにほら飛んでいけ!"
鑑賞日 7/8
鑑賞時間 19:00〜20:30
座席 M-18