劇場公開日 2020年1月25日

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「モノクロの画面が、色彩豊かな映像に変化していく瞬間がたまらない」彼らは生きていた セッションさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0モノクロの画面が、色彩豊かな映像に変化していく瞬間がたまらない

2020年6月14日
iPhoneアプリから投稿

歴史的名作『#ロードオブザリング』シリーズで知られる
ピーター・ジャクソン監督による戦争ドキュメンタリーは、
第一次世界大戦の戦場を、これまでにないほど身近に、生々しく感じられる一本でした!

100年以上前の映像を最先端技術によってリマスターし、
大戦に従事するイギリス兵たちの姿をみずみずしく描きます。

本作最大の特徴は、
大戦当時の映像を色彩豊かにカラーリングし、3D加工を施すことで、
現代に撮られた映像と見間違ってしまうほどのリアルさを追求した点にあります。

遠い過去の話に感じられるモノクロの画面が色味を増し、
躍動感あふれるカラー映像に変身していく瞬間は、
思わず声が漏れてしまうほどの感動に包まれました。

またこの映像は、戦闘シーンを迫力満点に見せるだけでなく、
兵士たちが日常に見せる人間臭さを強調する効果も生み出しています。

過酷な戦場においてもユーモアを忘れず、
いかなる時も紅茶を楽しむ彼らの姿は気品にあふれており、
彼らが放つ「戦場ジョーク」の数々には爆笑させられてしまいました。

一方、当時イギリスと敵対していたドイツ兵についても、
一人一人を好感の持てる青年として描いており、
決して個人を断罪するような作りにはなっていません。

このことを踏まえると、
原題の『They Shall Not Grow Old(彼らはもう年を取らない)』という言葉は、
亡くなった若いイギリス兵たちだけでなく、
彼らに殺されたドイツ兵たちにも向けられたメッセージのように感じられました。

この射程の長い、温かいまなざしがとても心地よく、
異なる集団同士の人間でも、お互いを理解し尊重しあえることを、
改めて実感させてくれました。

当時はまだ珍しかっただろうカメラに、
照れ笑いを浮かべる彼らの姿が目に焼き付いて離れない、
今後何度も見返すであろう素晴らしいドキュメンタリーでした。

同じく第一次世界大戦のイギリス兵を描いた『#1917』とセットで、
できればこちらから先に鑑賞していただくのがオススメです!

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