「100年前の生の証言からわれわれは何を読み取れるか?」彼らは生きていた バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
100年前の生の証言からわれわれは何を読み取れるか?
1910年代の記録映像を加工し、カラーにしてコマを補完して、唇の動きをもとにアフレコをして、効果音で戦場の音を再現する。「これはドキュメンタリーなのか?」という議論は起きてしかるべきだし、戦争というテーマを離れて、映像とリアルの関係性について考えるいい機会になっていると思う。
とはいアフレコされた音声が作品としての方向性を決定づけているわけではなく、本当に第一大戦に従軍した元兵士たちの膨大な証言がベースになっていて、その点では間違いなくオーラル・ヒストリー・ドキュメンタリーになっている。
非常に印象に残っているのが、国家的高揚と戦場の現実との対比と、前線の状況を受け入れるしかない兵士たちの無常観にも似た境地。映像技術が成し遂げたことも凄いが、やはり、生の証言を積み重ねることで(もちろん演出意図によって再構成されているが)生まれる重みにこそ、本作の真価が宿っている気がしている。そしてひとつひとつの証言の意味が、見方を変えることで百通りに違ってくる非常に多層的な作品である。
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