「モノクロからカラーへ、戦争の悲惨さがリアルに蘇る!」彼らは生きていた ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
モノクロからカラーへ、戦争の悲惨さがリアルに蘇る!
「戦争に参加しないものは臆病者だった。」
臆病者と思われたくない、友達も参加するから一緒に参加しよう。
そんな軽い気持ちから参加することにした当時のイギリス人の姿が、何故か現代の若者の姿にダブって見えてしまいました…。
やりたいことも特にない、友達がいるから参加したい。
よくあるなし崩しな感じの参加だったはずなのに、いざ始まってみるとそれは想像以上に過酷な世界でした。
戦争前のモノクロだった世界に、戦争スタート直後から、鮮やかな色彩が加わった瞬間。
まるで寓話のようにしか思えなかった世界が、突如として鮮やかに目の前に現れる感覚。
これは、なかなかの衝撃的な印象でした。
銃を片手に溝に潜り込み、敵がいつくるのか待ち続ける、ジリジリする緊迫した世界。
いつ、自分が殺されるかわからない状況の中、仲間の存在は常に自分の心のそばにあったとのこと。
でも、いざ隣にいた親友が銃弾で撃たれて死んでしまえば、突如として仲間の存在は自分から離れていく…。
自分たちが潜んでいる場所の数メートル先で、死んでいった仲間が腐ってネズミに喰われていくという…。
そんな悲惨な現状が、カラー画像によって鮮やかに蘇ります。
モノクロの漠然とした映像ばかりだった戦争が、緻密に悲惨に残酷に冷静に、映像から全てを伝えてきます。
上官の命令から始まり、鐘の音と共に静かに終わりを告げた戦争。
この戦争で彼らが得たものって、なんだったのでしょうか?
戦争が終わっても、街中の人々は戦争のことを一切語らず、帰郷してきた兵士にも冷たい態度。
更には、就職先まで見つからないという過酷さ。
命がけで戦い抜いて生き残った自分の存在価値って一体なんだろう…。
虚無感の残る、悲しく寂しいラスト。
その後、こんな悲しい出来事があったにもかかわらず、第二次世界大戦がまたまた勃発してしまうのですから切ない…。
あれだけ悲しくて辛い思いをして来たのに、また戦争が起こってしまうのですから、人間って実に愚かな生き物。
鮮やかすぎる映像故に、そのリアルな生活感と虚無感が全身を包み込むラストでした…。
貴重な映像をありがとうございました(^^)