劇場公開日 2022年5月20日

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「【文化大革命時、人生を翻弄された男と、父のいない少女との交流を、当時の中国の映画の位置づけと共に描き出すヒューマンドラマ。】」ワン・セカンド 永遠の24フレーム NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【文化大革命時、人生を翻弄された男と、父のいない少女との交流を、当時の中国の映画の位置づけと共に描き出すヒューマンドラマ。】

2022年7月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

ー 主人公の男(チャン・イー)は、1969年文化大革命の最中に、喧嘩を起こし強制労働所に送られる。妻と娘と別れた数年後、男は国威発揚のニュース映画の中に、娘が1秒だけ映っていると知り合いから聞かされ、強制労働所を脱走する。
  そして、巡回上映を追いかけ、娘の姿を見ようと奔走する。
  その途中、大切なフィルムを盗む娘(リウ・ハオツン:今作はオーディションで選ばれたそうだが、何となく「初恋のきた道」のチャン・ツィイーを思い出す清楚で可憐な少女である。)との出会いや、運搬中にフィルムが汚損したりと、トラブルが多発する・・。ー

◆感想<Caution! 内容に触れています。>

・主人公の男と、親のいない娘の関係性が最初はトラブルから険悪になるが、娘がフィルムを盗んだ
理由が明らかになる所から、関係性は徐々に変わって行く。
ー 冒頭の、広大な砂漠のシーンからここまで一気に見せる、チャン・イーモウの脚本の巧さ。-

・当時の映画事情が垣間見える処も、面白い。
ー 月にたった一度の庶民の娯楽であった映画。町の人達が、待ちわびる映画。そんな彼らの姿や、熱気が画面一杯に伝わってくる。-

・映写技師の男が、自分の息子が運んできたフィルムを汚損させてしまうシーンからの、町の人達総出で、フィルムの泥を落とし、蒸留水で丁寧に拭き、うちわで乾かすシーンもとても良い。
ー 映写技師の息子が幼きときに、洗浄液を間違って飲んでしまい、脳をヤラレテしまった事を、映写技師が男に話すシーン。映写技師が、ナイフで脅されつつも、男に優しくする理由が分かる。-

・そして、”英雄子女”が終わった後に、映写技師と男が二人だけで、映写室から男の娘が一瞬だけ映っている”国威発揚のニュース22号”を見る。男は、涙で顔を濡らしながら、何度も”見せてくれ”と映写技師に懇願する。
ー 何となく、「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出してしまうシーンである。
  そして、映写技師は保安に通報するも、捕まった男の胸に彼の娘が映っているたった2枚のフィルムを入れて上げるのである。-

・時代は変わり、2年後、男は町に戻って来る。そこには、女の子らしくなった娘が待っている。娘は男が捕まった際に映写技師が胸に入れてくれた紙を大切に保管していてくれたが・・。
ー この辺りも、巧い。単にハッピーエンドで終わらせずに、一捻り入れる脚本の巧さが光る。-

<男が、冒頭は一人で。ラストは少し女の子らしくなった娘と歩む広大な砂漠の光景が印象的である。
 今作は、文化大革命当時、中国での映画が庶民から如何に愛されていたかが、仄かに分かるヒューマンドラマでもある。>

<2022年7月9日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU
きりんさんのコメント
2022年7月10日

NOBUさんこんにちは
ぜんぶのシーンがよみがえってきて感動を新たにしました。
NOBUさんは映画館から戻られてすぐの”記憶と記録の日誌“を先ず上げて下さる。そして登場人物たちの働きぶりと心理分析、そして改善と共感。
いつも技術監督のレビューは違う、熱くて凄いなぁと思わされています。ありがたいです。

劇中、息子を洗浄液の誤飲で”失った“映写技師と、娘を探す父親と、父親のいない浮浪児の娘が一緒にスクリーンを見つめ、保安隊のみんなも一緒に映画を見つめる・・
素晴らしいシーンでした。

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同じ「きりん」銘のレビューアーが先週からこのサイトに加わっており、フォローされてしまって重ねて困惑しています、運営には善処を求めましたが。

きりん