ニューヨーク 親切なロシア料理店のレビュー・感想・評価
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倫理観がおかしい
警察官のDV夫から逃れた妻と子が、ロシア料理店に
集う人々に親切にしてもらう話
現金やカードを持っていないからといって
(家を出るのに無一文というのはどうなんだろう・・・)
妻が、何のためらいもなく、後悔も反省もせず、
当然の権利のように服やら靴やらバッグやパンや
料理を盗む・・・
子供に咎められると「困ってる人からは盗んでいない」
からいいと言う・・・
困っていなさそうな人からは盗んでもいいのか
倫理観がおかしい
盗んだ料理(キャビアなど)を子供に食べさせて
そういう(上流の)世界を知ってほしいとか
わけわからん(家から出た事ないと言っていたけど
子供はPC使えていたので、ネットでいろいろ
見ていただろうし)
「赦しの会」の存在や描き方も中途半端
DV夫がここに入って心を入れ替えるわけでもなく
罰されて刑務所送りになっているし・・・
困っている人を見かけたら助けましょう?
人を困らせている人は罰しましょう?
何を赦すのか
作り手がこの作品で何を伝えたかったのか
よくわからないまま観終えた
DV夫が刑務所に入ったから妻は大っぴらに
浮気をしてもいいらしい
ラストで化粧をしたら、別人のように綺麗に
なっていて驚いた
貧困と助け合い、そして心の傷と
貧困、暴力、相互扶助
テーマとしては凄く良かったと思う。
これらのテーマを根底に、時代遅れのやたら仰々しい老舗のロシア料理店を舞台にそれぞれが役割を担いストーリーが展開していく。
夫の暴力から二人の愛すべき子供達を守るため、着の身着のままニューヨークへ向かったクララ親子であったが頼みの綱であった義父にも断られ途方に暮れてしまい…。
ニューヨークという大都会を舞台に物語を面白くするためには仕方ない部分ではあるが、盗みを働く場面が多すぎて、個人的には不快に感じ、この母親に嫌悪感さえ抱いてしまった。
そこまでして自分をよく見せたいの?
子供を守る方法が違うんじゃないの?
子供に広い世界を見せたいのは分かるけどだからって先立つ物もないのにニューヨーク、マンハッタンとか安易すぎるし、ひもじい思いをさせたくないのは分かるのだが窃盗とか根本的に間違ってるし。
母親の行動に終始モヤモヤし、更に彼女に惹かれてしまうマークにまたモヤモヤ。
ただこういう人達にも分け隔てなく救いの手を差し伸べるキリスト教的観点に則してみれば、こう思ってしまう自分ってやっぱり小さいのかな、とアリスの存在により思わされてしまった。
この映画は主人公よりもむしろ看護師のアリスなしには成立し得なかっただろうし、このアリスの無償の親切こそ人を惹き付け、周りに人が集い、やがて心に傷を負った人々を再生させてしまう真に素敵な人だと思った。
そんな訳アリの人々に居場所を提供し、優しく見守る謎のオーナーもまた所々でこの物語に彩りを添えていて良かった。
アリスが主人公ではなかったからこそ色々感じる部分もあり、そういう意味ではいい映画だったかな。
Would you like to... see the menu? んー、微妙
ゾーイ・カザンが好きなので観てみた本作。んー、貧困になって大変そうなんだけどイマイチ心に響かないなぁっと考えてみると、あ、このクララって自分で何も努力してないからだって事に気が付きました。
DV夫から逃げるのは正しいと思うんですよ。あんなの許しちゃダメですし、おかしな人間に付き合う必要性なんて全くない。でも、NYにでクララがやった行動って人に助けてってお願いはするものの、自分で頑張ろうって姿勢が見えない。食べ物盗むのも窃盗ですしね。専業主婦だったからって努力をしない言い訳にはならんでしょ。しかも子供を二人も抱えているのに大人としての責任感はないのかな?多分そういう姿勢が個人的にピンと来なかった理由だと思います。やつれてく演技は上手かったですけど。
たまたま優しい人間に出会って何となくハッピーエンドだったのですが、なんか都合のいい展開だなぁっと感じてしまいました。特にDV夫が父親を電話機で殴るシーン。あんな分かりやすく夫を悪人にしたてて裁判に勝つような都合のいいエピソード入れちゃうのは脚本家として負けではなかろうかと思ってしまいます。
ビル・ナイのお爺ちゃんは良かったです。子供と二人きりになって何を話せばいいかわからず、メニューを勧めてしまう所とか大人あるあるなのではないでしょうか?
私は誰のNo.1でもない
DVの被害にあっている妻と子供が、
ニューヨークまで
逃げてきたきたことで
孤独で親切な女性とロシア料理店の
マネージャー達と知り合い、
暮らしを立て直す
お話でした。
ひとを一生懸命 に
幸せにしようと考えていると
本人のことは二の次にしてしまう。
誰かの犠牲で
成り立つ日常を
変えていこうという
メッセージに
溢れていました。
そんな状態は
結局 うまくいかない。
たけど、
それを実現するには、
まわりの親切と、
変わろうとする
本人の覚悟なんだよ。
って 。
現実には、
そうはいかない事も
たくさんありますが
願わくば
いい方向にいくように
変えていくために
できる範囲で意思決定したいなと。
アリスがジェフに
自分の人間関係を
「私は誰のNo.1でもない」 と
言ったことばには、
孤独を埋めるのは、
その他大勢の知り合いでは
ないということなんでしょう。
言葉の選び方に惹かれました。
言葉にした気持ちは、
それを変えていこうとして
行動にあらわれて
ストーリーが展開していったのが
ワクワクしました。
メインの恋の行方としての
マークの行動ですが
最後までクララに
控えめな態度を通しながらも
押さえきれない気持ちが
凄くわかるー
伝わってよかったなぁと。
寒い夜に少し暖かい気持ちで
帰れました。
スクリーンでは
ハッピーエンドが
好きなんです。
おすすめ。
母は強し。暴力警官の父親にも背景があったのはドキッとした。
ゾーイ・カザンって本当に芸達者で驚いた。最初は、この人何やってんの?というおどおどした学のない母親というのを見せておいて、どんどん苦境に追い込まれてからの、表情がガラリと深刻に変わってきて、終盤に見せる強い母親に変わっていく姿勢に感動した。
彼女の八の字まゆげの表情作りは面白かった!
暴力を振るう父親のその父親も離婚したのかどうかわからないけど、愛人(?)を抱えているというのを見せることで少し背景を見せるという監督の演出に監督自身の優しさを垣間見ることができた。
私を海に連れてって。
プレゼントは水着ですと?
まぁ、好きにしなよ。っていうか、「私の水着は見たくない?」って意味かw
とことん金が無いのは、本当に惨めでつらい。
こんなん見ると、自分は本当に恵まれてると思ってしまいます。
原題は"Kidness of strangers" =「見知らぬ人の優しさ」
ロシア料理店に限った事では無いんですが、母子と巡り合った人々は、すごく優しかったり、少しだけやさしかったり、親切にしたいけど事情があってできなかったり、もっと根深い問題を抱えていたりと、様々です。
アンドレア・ライズボローがブロンドのショート。彼女は、何かいつも独特の雰囲気で魅力のある女性役ですよねぇ。バトル・オブ・セクシーズの時は、無茶エロくて萌え女子だったけど。相当やせましたね。
ゾーイ・カザンの旦那はポール・ダノ。夫婦そろってええ感じで頑張ってて何よりです。と言うか、しばらく見ない間に一気に老けた感がするんですけど。娘役だった「バスターのバラード」は2018年ですから、それほど時間たってないんですけどw
DVダンナが警察に追われる身となり、シェルターへの移送が決まった夜。激しく求めあうように唇を重ねあう二人。と言うか、むさぼるように、ですよね。母親であることを忘れて、一晩だけオンナに戻っちゃえば良いのに。って思ったのはワシだけ?
母子三人の身なりと表情が、少しづつ惨めになり、ホームレス化して行く描写が、哀しく切なくなります。見知らぬ人に優しくした人達が、最後には幸せになれて、ホンワカ気分で終われる良い映画でした。現実に目を移せば、私たちは、見知らぬ人に優しく無いよねぇ、それほど、ってのはあるので反省します。
良かった。結構。
アメリカの大都会をアメリカ映画以外で描く
群像劇。警察官の夫のDVから2人の息子と共にニューヨークに逃げてきたクララ。愛した人からひどい裏切りをされ、今は看護師をしながらホームレスやセラピーのサポートグループを運営している独身のアリス。犯罪者の弁護をして悩んでしまいセラピーに参加するジョン・ピーターと、彼に付き添っているロシアンレストランのマネージャーで弟を薬物中毒で亡くし自身も出所したばかりのマーク。仕事がいつも上手くいかず行き場がなくなった若者ジェフ。
一見、何事もないように暮らしている人たちも心に孤独や闇を抱えていて、お互い許し合い助け合うことの大切さを描いている。
警察官のDV夫の怖さは「セイフ・ヘイブン」で描かれている通り。しかしこの映画ではそこまでではなくて救われた。
途中、息が詰まる毎日に息子が公衆トイレの個室で号泣していたのをドアを蹴破って助けてくれたホームレスに対してクララが少しおどおどした視線を向け、それに対してホームレスの男性が「目を見ろ!私だって昔は家族がいた。君と同じだ!」と怒る。そうなんだよねー。紙一重。
映画の中で目立つのは、ホームレスへの食事のサポートや衣料の配布など、サポートプログラムの充実。公的支援でなくおそらく民間のプログラム。キリスト教の文化では施しをするのが習慣として存在するからこそ成り立つシステムで、施しを受けることが恥で、恥をかかせることになるからあまり施しをしない日本では、支援を民間に任せてはこのようには機能しない。
シンクにスプーンを置いてはいけない
ましては怒りを暴発させてはいけない。
家を支配する暴力から逃れると家を失い、社会から弾かれると仕事も家も失う。辛い現実だ。
夢見るような音楽やカメラワークは心温まる結末を与えてくれる。親切なロシア料理店にはそんな映画が生まれる。
親切こそ人間に必要なもの。そこには人を尊重する距離があり、思いやりがある。
盛り込みすぎて伝わり辛い
この映画には、2つの核となる場所と、1つの主軸となる出来事がある。
1つは、タイトルにあるロシア料理店。新しく雇われたマネージャーのマークを中心に、スタッフ達、常連客達が出入りする。
2つめは、教会。看護師のアリスが行う炊き出しやセラピーの会に、登場人物達が関わっていく。
そして、主軸となるのが、夫のDVから逃亡中のクララと2人の息子。この家族の苦難を中心に、2つの場所を繋いで、マークとアリス、その他の登場人物達、各々の問題や心の傷が、互いに寄り添う事で癒されていく、という群像劇なのだが…。
どうにも話の座りが悪く、スッキリできない。
DVに怯える子供達と、2人を連れて路頭に迷うクララの悲惨さが強調され、これは思いの外社会派の作品だったか…と思うと、裁判の経緯はスルスルと端折られてしまって、拍子抜け。
それなら、「傷付いた他人同士、どうして思いやれないのか」とのマリアの台詞通り、絆や隣人愛というハートフル面に帰結させるつもりかと思いきや、微妙な恋愛エピソードが挟まり、気が付くとカップルが2組。各自の問題もふんわり解決しているので、あれ?これもしかしてラブストーリーでした?と、腑に落ちない心境のまま終了…。
原題が『The Kindness of Strangers』。言いたい事は解る。
社会制度からこぼれ落ち、傷付き失われていく命や心がある。ギリギリの所でそれを掬い上げる事ができるのは、傍にいる個人個人の小さな優しさではないか。
恐らくそういう事だろう。が。
例えば、教会の方に視点を絞って、ガッツリ社会問題として、思い遣りや労り合いの大切さにクローズアップする。
或いは、ロシア料理店を舞台に、様々な立場、人種の人々の、人生の交錯と助け合いを、舞台脚本風の群像劇として見せる、など。
脚本や演出の工夫で、もう少し解りやすく面白い作品にできたのではないだろうか。
ボルシチもピロシキも出てこないのになぜか心が温かくなる 瞼の裏もじわーっと熱くなる
子供二人をワゴン車にのせてDV夫から夜逃げする愛くるしいママ。お金がないので、子供を図書館に置いてパーティー会場に忍びこんで飲み食いしたり、万引きしたり。キャビアが気にいった下の子が「まだ旅行?」と何度も確認するのが可笑しかった。
仕事をクビになってしまい、やけっぱちで、オフィスビルの窓ガラスを破って頑丈そうなワークチェアを道路に投げ捨て、ケツまくっちまう青年。
大病院の救急担当の看護師(おそらく心理カウンセラーの資格も持つ)は多忙なのに、教会でこころに傷を持つ人たち向けのボランティア団体も主宰するし、ホームレスに無料の食事支給の手伝いもする。頑張り過ぎる人。勤務明けにひとりで寄る行きつけロシア料理店。
おじいさんから老舗の店を受け継いだが、経営には興味がまるでない老人(ビル・ナイ)。
弟とロシア料理店を経営していたが、弟が麻薬に手を出し悪い奴らとつるむ様になり、刑務所に入る羽目になったが、報酬や勝訴にこだわらない親切な弁護士に助けられた青年コック。
親切な弁護士は青年コックの付き添いで教会の会にいるだけと言うものの、弁護士?と思うぐらい不思議ちゃん。
老舗ロシア料理店が「家」となり、なにも取り柄のない主婦と子供を見守り、助ける人々が互いに支え合うのを見て、まるで自分が親切な人々に囲まれて、愛されていると勘違いしてしまうような素敵な映画でした。
親切戦隊ストレンジャー
ロシア料理店でのバントの生演奏もよかった。House of Rising Sun と wayfaring stranger だったかな。映画の題も The Kindness of Strangers. あのでかいギターみたいなロシア楽器はなんていうんだろう?ドアボーイで雇ってもらった青年(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)があの楽器を抱えて店の外で呼び込みに出る時に、オーナーのじいさんに「弾けるか?」と言われて、押さなきゃ開かない店のドアを「引いて」開けようとするエンディングの元のセリフが気になりました。たぶん、訳の人のアドリブですね。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズはミュージシャンでもあるらしい。最初は危なっかしい役でしたけど、ボランティア側から施しを受ける方にもなったりして、引き立て役だったけど、よかったです。
あの椅子は最後はどこに行ったんでしたっけ?
隣人に優しく、親切にする事が幸せなサークルを生む
主人公のクララは夫の暴力、虐待から子供2人と家を飛び出しホームレスとなる。
マークは過去に弟が薬で捕まり自分の店を閉じ、そして刑務所行きとなった。後に弟も薬の過剰摂取で亡くす。
故に心を閉ざして今を生きている。
ジェフは障害を抱えているのか、仕事が人よりもできずミスが多い。故にどんな仕事に就いても長くは続かずホームレスとなる。
アリスは看護師という立派な仕事に就いているが、過去の恋人への裏切りが心に大きな傷を負いトラウマとなり今を生きる。自分が傷ついた分必要以上に人に親切に優しく接するが中々自分自身は幸せになれず苦しんでいる。
ニューヨークという世界的にも大都会で世界の人々が羨む街に生きる人々は皆が皆幸福に満ちているわけではなく、問題を抱えて生きる人も多く、必死に今を生きている。
ここに出てくる登場人物達は決してものすごく裕福な暮らしを皆が皆しているわけではなく、各々自分の生活でいっぱいいっぱいでもある。ただ困った人を親切に、そして優しく接していく描写が終始続いてとても温かい気持ちになる。
この作品の大好きなところは見返りを求めない優しさだ。
最終的にクララとマーク、そしてアリスとジョンは恋に落ち合うが、その関係は運命のような出会い方ではなく互いに優しく接し合い助け合い生きていく先に愛が生まれたわけだ。運命的な愛も良いが、この作品のような愛の生まれ方は非常に心打たれるものがあった。
もちろん恋がメインな作品ではない。困った人がいたら親切にそして優しく接し助け合う理想の社会とは現実はまだまだ程遠い。
この作品のようにまずは身近な存在、隣人と優しく、親切な、そして助け合える関係を築いていく事で小さな幸せな関係が、大きな優しさに溢れれた幸せなサークルと化していくのであろう。
最終的には恋に落ち合うが、見返りを求めず、人間が本来持つ他者への優しさや親切心を存分に描かれており、それらの心を擽る非常にハートフルな作品であった。
とても大好きな作品である。
あたたかいのは素敵。でも…
成長期の息子2人を抱えて、その日食べさせるものもなく、身分証もキャッシュカードもお金もない切羽詰まる感じは分かるけど、配給以外は犯罪と依存では?
いや良いんだ、それはいい。仕方ないよ分かる。
ロシア料理店や周りの人は確かに親切で優しくて、救われていくのは素晴らしいことだと思う。
だけど私は見たかった。
この、男で失敗した女性が、自分の足で立ち、歩き出す姿を。誰かに頼るのではなく。
新しい恋など始めている場合ではない。
夫だか元夫だかの稼いだお金か賠償金で、プレゼントなんて買っている場合ではない。
仕事を探しに行け。今度こそ強い母親になってくれ。
そして返しに行け、やむを得ず盗んだところへ。
それが描かれていたなら、この作品は素晴らしい。
幸せ探し
タイトルが気になったので観てきました。
ニューヨークのマンハッタンで、創業100年を超える伝統を誇るロシア料理店〈ウィンター・パレス〉。だが、現在のオーナーであるティモフェイは商売下手で、かつての栄華は過去の栄光となり果て、今では経営も傾いていた。店を立て直すためにマネージャーがスカウトされるが、マークというその男は刑務所を出所したばかりの謎だらけの人物。店を支える常連の一人である看護師のアリスも、恋人に裏切られて以来、救急病棟の激務に加え〈赦しの会〉というセラピーを開き、他人のためだけに生きる変わり者だ。そのアリスを、絶望的な不器用さから次々と仕事をクビになったジェフら、ワケありの過去を抱えた者たちが慕っていた。
そんな〈ウィンター・パレス〉に、まだ幼い二人の息子を連れて、DV夫から逃げてきたクララが飛び込んでくる。無一文で寝る場所もないクララに、アリスとマークにジェフ、そしてオーナーも救いの手を差しのべる。しかし、駐車違反をきっかけに、警官である夫に居所を知られるのも時間の問題に。追い詰めれたクララは、皆から受け取った優しさを力に変えて、現実に立ち向かうことを決意する。
〈ウィンター・パレス〉で、それぞれが見つけた新たな人生とは?
クライマックスは良かったが、その後をもうちょっと見てたかった。きっとマークという新たな伴侶を得て幸せになったのだろう。
【心に傷を負っている人々が、心に傷を負った”見も知らぬ他人”を気遣う姿の尊崇さを描いた、”粋”なヒューマンドラマ。特に後半は、じんわりと人の優しさ、温かさを感じる事が出来る作品でもある。】
ー 夫が子供に暴力を振るう事に悩む妻。
セイフティネットの網から、零れ落ちてしまった人。
悪人を弁護する事で、心に悩みを抱える弁護士。
愛する人に裏切られた人。
弟がオーヴァードーズで亡くなり、自らもその絡みで刑務所に2年間入り、出所後は人嫌いになった人。
ロシア料理店の経営が上手くいかない人。
・・この作品は、このような心に傷を負った、閉塞感を抱える人々が、不思議な縁で繋がり、仄かな希望を持って前を向き、再び歩み始める物語を描いている。-
・クララ(ゾーイ・カザン。・・映画製作も手掛ける才女。ポール・ダノ君は元気かな。親戚のおじさん状態でハラハラしながら鑑賞。)は警官でもある夫が二人の子供、兄アンソニー、弟ジュードに暴力を振るう事に悩み、バッファローからN.Yへ逃げてくる。
けれど、お金も知り合いもなく、生活にも困窮する日々。
そして、時間潰し、且つ、観光名目で訪れる”ニューヨーク公共図書館”。
-辛いよなあ・・・。警官の夫には本当に腹が立つが、彼も”病気なのだろう・・、暴力衝動を抑えきれないという・・”
図書館を”避難所”として過ごすホームレスの人々を描いた「パブリック 図書館の奇跡」が、脳裏を過る・・。
愚かしき、父の命令で弟に暴力を振るわされる兄アンソニーに対して、弟のジュードが言った言葉、”大丈夫・・、(お兄ちゃんは無理やりやらされているのだから・・)赦すよ・・。”と言う言葉が心に染みる・・。-
・アリス(アンドレア・ライズボロー:凄く好きな女優さんの一人である。「オブリビオン」で、美しい肢体に魅了され、「バードマン・・」「ノクターナル・アニマルズ」「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」と、私好みの作品に出演している。)は看護師で、ER(Emergency Room:救急救命室 本では読んでいたが、物凄いストレスを伴う業務であるそうである・・。私人としては、尊崇の念を抱く職場。現在、”Covid-19”の対応をされている方々も同様である。頭が上がりません・・。)も伴う病院で働き、炊き出しボランティアもし、癒しの場所(ケア)でも、人々の心の傷を聞いてあげている。
天使のような人だが、彼女も哀しき4年前の出来事があった。
- だから、あんなに傷ついた人々に優しいんだね・・。自分の生活を犠牲にしてでも・・。-
・仕事を2度も馘首になり、ホームレスになったジェフ(ケイレブランドリー・ジョーンズ ちょっと、残念な人を演じたら、近年No1.の役者さんである。)が、凍死寸前に助けられ、看護師アリスの元で、嬉しそうに働く姿。
・マーク(タヒール・ラヒム)はキャビアだけが売りの、ロシア料理店で働くシェフ。過去、弟を麻薬過剰摂取で亡くし、自らも2年間それが原因で、刑務所に・・。
オーナーは、ティモフェイ(ビル・ナイ:うーん、英国紳士・・。)。
経営に苦労しているが、ジェントルマンである。
オーナーの人柄が、従業員にも伝わっている。
例えば、パンを盗んだクララを見つけた従業員が、それを咎めず、
”パンを持とうか・・”
と問いかけ、一緒に従業員用のエレベーターに乗るシーンなど。
◆人嫌いだったマークが、自ら務めるロシア料理店のテーブルの下に隠れていたクララたちにそっと、食事を置くシーンがとても、良い。
クララの下の子、ジュードが雪の日に、屋外で過ごしたために、低体温症になってしまい、アリスの勤める病院で手当てを受けている時に、クララたちが一時的に料理店に避難したシーンである・・。
そして、警官であるDV夫から、アリスがジュードを守るシーン。
◆マークは、クララに”自分の部屋に来いよ”と言い、連れてくるが、長男のアンソニーは最初、母を守るために、マークに向かっていく・・。
- 自分の父親の所業が、重なったのだろうか・・。-
◆クララとDV夫との訴訟で頑張る ”悪人を弁護する事に疲れた”、マークの友人の弁護士ピーターも良い。
ー 彼が心に傷を負ったマークをアリスが催す、”癒しの場所”に連れて行っていた事は、キチンと、序盤で描かれている。-
<多少、ストーリー展開、及びアリスを主とした人物造形が粗い部分があるが、
”人の情けの大切さ” を随所で感じさせてくれる作品。
ニューヨークの冬の寒さは、本当にしんどいが(本当ですよ・・)、その寒さを少しだけ和らげてくれるハートフルなヒューマンドラマ。
”粋”で”気骨”ある人物とは、心に傷を負いながらも、マークやアリスのような行動を自然と出来る人の事を言うのだろうな・・、とも思った作品。>
◆2020年12月16日 追記
-有難い事に、キチンと当方のレビューの誤謬を指摘して頂いた方のご指摘を受け、ED→ERと修正しました。お恥ずかしい限り・・。-
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