屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのレビュー・感想・評価
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実話だからなぁ
この手の映画はたまに観る。猟奇的なことへの抵抗はそれほどないのだが、この作品はわたしには無理だった。
なぜかと考えてみると、実話なだけに美学みたいなものが感じられなかったからかも。
犯人は酒浸りで醜い容姿、女なら誰でもよくて酒で釣れる女をお持ち帰り。自分の欲望を満たすためだけに行動している。殺人も気がついたら殺してて、バラバラにしてトランクに入る分は捨てに行きあとは自宅にかくす。それは異臭を放ち、自分で吐く位臭いのだ。そこにこだわりや美学はなく、正直気持ち悪い感じだった。
ただ、実話なだけに、現実はこうだとしらされた感じもあった。殺人に美学とかはなくて、孤独な男が欲望のままに動きあっけなく捕まって終わる。あんだけ行き当たりばったりなら捕まるよね。
リアルなアル中映画
アルコールの中毒性の怖さをひしひし感じる映画。
それだけじゃないけど、カジュアルに人を殺しておいて、そこに快楽性があるわけでもなくもちろん悔いなんてあるはずもなく、ただカッとして思い通りにならなかった女たちを殺す。
女性に夢見てるフシがありつつ、愛情がセックスイコールというのもなんともはや。
アル中がどんどん落ちていく様、という一見ありがちな話に、ちょっと暴力と殺人が
挟み込まれてる、風なのがリアルに感じられて不気味だった。
更には、実話をもとにしてるっていうんだから、後味の悪さはなんとも言い難いもの。
街の底の底…
やり切れない気分になる作品だ。ゴアシーンがメインではなく、社会の底辺を這いずり回る人間模様を映し出す。恐ろしいのは、やはり人間であり、環境の悲惨さに比例するが如く堕ちて行く救われ無さである。沈めば浮かぶ瀬がないというものか…醜悪な登場人物たちの暗い世界と平行するように、怖いもの見たさの少女と少年が存在し、憂さ晴らしに汚い大人の世界に惹かれる。青春の最中に居る二人がこの作品の唯一の救いのように見えるが、学校という狭い社会に馴染めないことをきっかけにソドムの街に片足を踏み入れてしまったような、生き地獄の入り口をくぐったような不安感を覚える。エンディングで少女と殺人鬼が燃えるアパートの前ですれ違う。おぞましいばかりの暗さと燃える炎が少女と殺人鬼の内面を対峙させているような撮り方も面白く思えた。
追記:個人的な余談として記録する。
「若い」という事実は一種の免罪符でもあり、神聖なものの象徴のように見えて、思える。三島由紀夫の心情を本作にて思い知らされた気分だ。
屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ
実在した殺人鬼、フリッツ・ホンカの日常を描く話。
彼の住んでる屋根裏のボロアパート、その汚さや廃れた雰囲気が抜群に味の出ている作品。エンドロールでの実際の写真を見ればその再現の高さが伺える。
前半部分は何故?と思うほど呆れる理由で人を殺していく。淡々と。こういう殺人鬼が主人公の作品は大体が理不尽で自分勝手な理由があり、人を殺すのだが、この作品はそれに加えてフリッツ本人のだらしなさや醜さが精神的、生理的に見る者の憎悪をより膨らませてくれる。
スクリーンに映る理解ができない描写に苛立つ自分に鑑賞中気づくことかと。
だが、そんな彼も酒さえ飲まなければ、無害で普通の中年。ごく普通なのだ。けれど、孤独を埋めるために酒を飲む。自分の理性をコントロールできない彼はいつも暴走する。無理強いな愛を一方的に伝え、バーに蔓延る老売春婦を自宅に無理やり連れる。抵抗され、思い通りに行かなければ殺す。ただそれだけ。それが彼の日常。
後半部分の、孤独を埋めるため酒に頼る彼の姿、一度は酒を辞めようと努力する姿にどこか心当たりがあるようなそんな気がしたのも事実。
彼の場合、不器用で上手に人を頼る事ができず、それゆえ"殺人"という禁忌に手を染めたのではないのかなと。
腐乱死体の匂いを感じられる映画
1970年から1975年のハンブルグで起きた連続殺人死体損壊遺棄事件の実話を題材に忠実に映像化した真面目な映画だった。全編ドイツ語。あからさまなおふざけシーンはない。急速に復興を遂げるドイツにあって、戦争の痛手から抜け出せない人達の群像劇でもある。題名の Der Goldene Handschuh は実在の場末の大衆酒場の店名。店の常連客の男たちはそれぞれ特徴的なあだ名があり、その過去や嗜好をさりげなく説明するシーンがある。なかでも印象的だったのは、背がとびきり高く、左だけ遮光レンズのメガネをかけた男で、親衛隊の生き残り。爆発で聴力もやられており、左耳に補聴器をぶら下げている。飲み屋のトイレで、「将校にトイレで軽口で話しかけるとは・・・」と青年に因縁をつけて、青年に背後から小便をかける。いたって冷静にやってしまう。彼の中では戦争はまだ終わっていないようで、戦後の日本映画を思い浮かべてしまった。
フリッツが自宅に誘ったあげくに殺してしまう女は皆かなりの高齢者で、身寄りがなく、行き場を失って途方に暮れたものたちや戦争中は強制収容所で売春させられたと語る高齢の売春婦。この店にはガールスカウトみたいな制服を着た女も現れる。困っている人を救済する目的があるようだが、常連の女からは口汚く拒絶される一方で、この女に助けられ、フリッツに殺されなくてすんだ老婆も描かれる。
犯人はロンパリ(斜視)で顔面が非対称で歯並びが悪い。特殊メイク。もちろん異常者だが、計画性はまるでなく、酔っては突発的に暴力に訴える。気が小さい。女性の扱いが雑で、突っ込むことしか頭にない。が、飲み過ぎで、勃たないか、ふにゃふにゃの場面が多い。相当頭悪いです。何かしらの先天的なハンディキャップがありそうな感じ。4階建てのアパートの屋根裏部屋に住んでいる。トイレは外の廊下。バスタブもないみたいだった。
しかし、レコードプレイヤーはもっていて、死体をノコギリで挽く場面や女を連れ込んだ時に自分でかけます。この映画の音楽は当時の流行歌がレコードプレイヤーやレトロなラジオから流れます。
酔って交通事故に遭い、それを期に酒をキッパリ断つ。仕事もビルの夜警に変わる。そこで、同じく夜間清掃の三十代と思われる女性と知り合う。その女性はフリッツをあからさまに嫌う様子がない。笑顔のチャーミングな明るい雰囲気の女性で、恋の予感も期待させるような場面だった。実はその女性には無職のアル中の旦那がいて、家のローンのために働く現実に息苦しさを感じていたからなのだった。ある日、コニャックの瓶をもってフリッツの警備室を訪れた彼女の身の上話を聞いて、酒を勧められたのをきっかけにまた酒浸りに戻ってしまう。
下の階で暮らすギリシャ人家族の天井からウジ虫が降ってくるシーンは確かにホラー映画でした。このギリシャ人家族の部屋から火事がでて、消火後の現場から死体が発見されて、御用になるシーンは彼の妄想シーンでしばしば出てくる留年女子学生を追いかけるシーンに連続するもので、脚本も撮影も良くできています。夜警の仕事で、拳銃を持たされるけど、拳銃は最後まで使わなかったです。期待させておきながら。
アル中オンパレード
実話とのことで、本人をネット検索してみた。虐待されて育ち、IQが低かったよう。
映画の中盤では、まともな生活を送ろうと酒を断った。その時は、ホンカの人情味を見た気がしたのだけど。。
アル中が引き起こしたんだな、ホンカの破滅は。登場人物は学生を除いて全員アル中に見えた。
あと救世軍の女性も、まともか。彼女は本当に一人の娼婦を救ってくれた。
この映画で得た教訓:酒を勧めない
生活の一部の殺人
・フリッツの最初の殺人から発覚される所までを淡々と描いてて殺人が非日常の大事件ではなく日常の延長のような印象を受けて。
・フリッツ・ホンカの家が物凄く汚くおぞましかった。
・フリッツの周囲の人間すべてが世捨て人のような日陰者たちだらけでその中でもやっぱり上下があるようでその中では結構上の位置に属している感じが唯一の救いのような感じがした。
・殺人鬼が主人公ではあるけど、状況をみていると悲惨で最下層と思われる老齢の売春婦にもあんな不細工と持ち前のどうしようもない物を罵られて断られるような可哀そうな面は共感できなくもない。
・顔と姿勢と性格と生まれつきによる宿命の悲惨さが凄かった。フリッツだけではなく、兄弟や街の住人達もどうしようもない、なるべくしてなったような生活を送っている様子が悲惨だった。金八のいない昔の中学生日記を観ているようなヒーローのいない世界が続いてて、時代背景が1970年だから観れたけど現代に近い話だったら耐えられなかったかもしれない。
・殺された人達も風俗街と呼ばれている所では一番下位クラスのバーにいる老齢の売春婦というのがまた悲惨すぎる。中には戦争時の収容所で売春させられたという人も現れて抗いようのない時代を生き延びて、この生活っていうのが伺えてきつかった。
・フリッツの部屋も大量のスレンダーで魅力的な女性のヌードを貼ってある中でそういう女性とのセックスに憧れを抱くも叶わず老齢の体型も年相応の太った女性に相手をしてもらってるという救いのない状況にいる中でフリッツも周囲の友人達もアル中のようでとにかく酒を欲しているのも凄惨すぎる。弟も離婚した女性がいつか戻ってくると思うんだと淡い願いを語るのも切なかった。
・天井からウジ虫がスープに降ってきたら一生のトラウマになると思った。気持ち悪かった。
・当時の住宅事情なんだろうけど、風呂がなさそうで、仕方なしとは言えあんな狭い部屋で水場もなく凄いなと思った。相当臭そうだろうなと思った。当時から消臭スプレーってあったんだなとも思った。
・下半身丸出しで人殺しっていうのがなんか面白かった。そしてのきなみ巨体の女性を息の根が止まるまで描いてるっていうのを初めて観た。
・天使だったか理想だとフリッツが言ってた女性が留年する不良っていうのが良かった。
・主演の人が本物かと思うクオリティで凄く良かった。隣人にいてほしくない。
・フリッツが若い女性や好みの女性とヤリたいけど全然叶わず、誤魔化そうと苦しんでいる姿が迫真でとても良かった。
・尋常じゃなくアルコールをみんなが欲してて怖かった。
・身分不相応な願いを持つのは苦しみを生む原因なんだろうかと考えさせられた。
・真面目そうな学生があのバーに彼女と一緒に何故来たのだろうと思った。どこが気に入ったのだろう。その鼻っ柱を隊長?だったかの高身長のおっさんがうしろから小便かけたのが面白かった。
・ラスト、火事でわかるっていうのが面白かった。事実もそれっぽかった。
怖いもの見たさ
「女は二度決断する」のファティ・アキン監督が作品。1970年代のドイツ・ハンブルクに実在した5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人犯のお話をベースに作られた話です。昔観た「セルビアン・フィルム」を彷彿とさせるグロさです。主人公のフリッツ・ホンカは寂しい男と女が集まるバー「ゴールデン・グローブ」で最下層の女達を広い自分のアパートに連れ込みSEXしてから殺害して切り刻み雑に包装して部屋の物入れに押し込んでガムテープで密封する。酒を飲みながら淡々と雑に作業していきます。途中から酒が悪いと反省したのか禁酒してガードマンとして真面目に働くが、職場の清掃係の女とその夫から酒を勧められもろくも解禁してまた殺害し切り刻み押入れに入れる。助かる女と殺される女、女たちは皆、太っていて性格はだらし無く醜悪に描かれており、その女達を狂気かつ暴力的に殺していく主人公。酒場での個性的な友達達や常連の女性客。全てにおいて救いがなく生々しくおぞましく怪奇的です。唯一まともなのはホンカが想いを寄せる若い女なんですが、最後はその子のことも付け回して一歩間違えばその被害者になり得る状況でしたが、突然の結末を迎えます。ほとんど救いのない映画ですが、圧倒的な力を感じて最後まで観てしまいました。
明らかに好みの分かれる狂気の作品です。
変な作品がたまに観たくなる衝動にかられる事があるんですがw、予告編で観る限りでは殺人鬼の話であっても、何処か物悲しい作品なのかなぁと言うイメージぐらいでしたがとりあえず鑑賞。
で、感想はと言うと、すんごい変態でゲスな感じw
エグい。ゲスい。グロいの三拍子の三冠王w
ここまで臭いた立つ様な生々しくも気持ちが滅入る作品も珍しい。ある意味凄い作品。
フリッツ・ホンカが恋い焦がれるペトラがフリッツの手に掛からなくて良かったなぁと思いますw
もう主人公のフリッツ・ホンカがクズで鬼畜で最低野郎過ぎ。
実在した殺人鬼でシリアルキラーの話ではありますが、終始ゲスでグロい。映像も汚く何処か生々しい。登場人物達も殆どゲス。
娼婦の老女達も良い具合で生々しくゲスい。
ゲスの極みな感じで、かと言って同情出来ないかと言うと同情出来ないけど、ここまでゲスいと逆にコメディに感じます。
フリッツ・ホンカがゲルダに自分の娘を差し出す誓約書に「多大なる恩恵を受けたので、娘をつまみ食いさせます。」なんて文章は字幕でのちょっと強引な和訳でも笑ってしまうし、急にバスに撥ね飛ばされるのが修道院の前と言うのもコメディチック。
そう考えると凄い作品なんですよね。
とにかく、フリッツ・ホンカに尽きる訳で、フリッツ・ホンカが酒の力を借りると欲望のままに赴き、弱い者に対してのみ虚勢を張る。
実在のフリッツ・ホンカは幼少期の体験から大酒飲みになったとの事でその辺りの件りは劇中では描かれてないので、フリッツ・ホンカに同情する部分は殆ど無いんですが、哀れと言えば哀れで、その哀れっぷりを差し引いてもここまで外道っぷりを描ききるとある意味天晴れ。その振り切れ具合がブッ飛びまくってます。
フリッツ・ホンカを演じるヨナス・ダスラーは弱冠24歳ですが、特殊メイクで40代の中年を演じきってるのが凄い。
とにかく、さえない駄目男過ぎて、稀代のシリアルキラーに違和感が無い。
また、フリッツ・ホンカの周囲も良い具合でダメダメ。
弟のジギーも結構なゲスっぷりだし、乱れまくったバー「ゴールデン・グローブ」の客もダメなら、店主も良い感じで無関心。
再就職先の勤務地で掃除婦をしているヘルガが良い御婦人かと思いきや、会社の休憩室で旦那と酒を飲んでる。
唯一普通な感じなのはフリッツ・ホンカが恋い焦がれるペトラとペトラのボーイフレンドのヴィリーぐらい。
ツッコミ所としては、数々の犯行が明らかになるフリッツ・ホンカの下の部屋が火災になった原因が明確でない事。
当初は下の住人が天井から蛆虫が落ちてきた事に腹を立てて、火をつけたかと思ったけど、それならあまりにも無計画で短絡的過ぎる訳で、史実では下の住人が蝋燭の灯りを消さずに外出した事が原因で出火したとの事で、この件りの描写が無かったのはちょっと惜しいかな。
白の中に黒を入れるとより黒が際立つんですが、フリッツ・ホンカの回りはお世辞にも白では無く、かなりの灰色。そんな灰色の中でもフリッツ・ホンカの放つ狂気の黒は果てしなくドス黒く際立ちんですが、灰色の中だからこそ、目立たなかった。
彼の持つコンプレックスが女性への欲望を掻き立て、1970年の動乱のドイツで全てが不安定な中、低所得者の貧困層はいろんな不満と欲望が渦巻いていた事も狂気の思考が生まれた要因かと思います。
それでもここまでブッ飛んだ思考を凄まじい描写で描くのが凄すぎ。
明らかに好みが分かれる作品ですが、こういうブッ飛んだ珍味的作品を所望したい衝動になりましたら如何でしょうかw
すごいのを見た
顔が気持ち悪い男が、誰も相手にしないような酒場にいる女を自宅に連れ込んで殺したり、殺さなかったりで、どうしようもない。そんな彼でもそれなりに社会生活を営んでいるのがすごい。酒場にいる連中も、若者の背中におしっこを掛けるようなおじさんだし、しかしそんな彼は連続殺人鬼ではない。生理的には背中におしっこを掛ける方が凶悪な感じがする。酒場の連中の会話がひどい。ひどくて面白い。
主人公が警備の制服を着た途端、いくらかまともに見えるので制服はすごい。酒場に現れる救世軍のおばさんも素敵だった。
どん詰まりの掃きだめのような酒場には、負をまとった連中とかかわりを持ってしまうことも大いにあり得るので居場所の重要だ。人が大酒を飲んで酩酊してめちゃくちゃになっている様子を見るのは面白い。また、アル中みたいな状態でちんちんが立たないのに、性に貪欲なのはすごい。性欲と機能が直結してないのだろうか。
今年はまだ2月だけどもしかしたら今年一番腹の座った映画かもしれない。
好みが大きく分かれる作品
ドイツ文化センターにて試写会で観賞。
正直きつかった。2時間弱くらいあったと思うが常に女性を性的に見て、女性を人間として扱わず暴力を振るい時に殺してまう…そんなのがずっと続くため正直途中で帰りたかった…(試写会場が途中退出しにくい作りだった為我慢したが)
もちろん作品を否定するつもりはないが、好みが大きく分かれる作品だとは思う。
個人的には勝手ながらどういう経緯で犯罪者になったのかといったストーリー性を期待し足を運んだのだが、そういった描写はなく、フリッツが初めて人を殺してから捕まるまでの時間軸を作品にしたといった印象。
フリッツも根本としては人と人との関わりを求め、愛される事を求めているんだろうけど、そこに同情心が湧くほど弱さが見えない。ただただ不快な存在である。
昨今は人を見た目や第一印象で判断するのではなく、また障害や欠落した部分も理解し助け合おうというのが時代の流れのように感じる時がよくある。
もちろんそれは大切な事だが、自分の身を守るのまた自分だ。
こういう作品を見るとやはりおかしいと思う人には近づかず、関わりをさける事こそ自分を守ることに繋がると思えてくる。
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