「街の底の底…」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
街の底の底…
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やり切れない気分になる作品だ。ゴアシーンがメインではなく、社会の底辺を這いずり回る人間模様を映し出す。恐ろしいのは、やはり人間であり、環境の悲惨さに比例するが如く堕ちて行く救われ無さである。沈めば浮かぶ瀬がないというものか…醜悪な登場人物たちの暗い世界と平行するように、怖いもの見たさの少女と少年が存在し、憂さ晴らしに汚い大人の世界に惹かれる。青春の最中に居る二人がこの作品の唯一の救いのように見えるが、学校という狭い社会に馴染めないことをきっかけにソドムの街に片足を踏み入れてしまったような、生き地獄の入り口をくぐったような不安感を覚える。エンディングで少女と殺人鬼が燃えるアパートの前ですれ違う。おぞましいばかりの暗さと燃える炎が少女と殺人鬼の内面を対峙させているような撮り方も面白く思えた。
追記:個人的な余談として記録する。
「若い」という事実は一種の免罪符でもあり、神聖なものの象徴のように見えて、思える。三島由紀夫の心情を本作にて思い知らされた気分だ。
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