「酒場の隅で、苦虫を噛み潰し絶望感漂う肥った女達のなんという暗さ」屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ フレンチカンカンさんの映画レビュー(感想・評価)
酒場の隅で、苦虫を噛み潰し絶望感漂う肥った女達のなんという暗さ
つまみは問題じゃない。ただひたすらにジンやウォッカを飲み続けるだけが生きがいの様な人々がたむろする一杯飲み屋に、もう顔が割れているはずの殺人鬼が、女を求めて夜な夜な現れるシチュエーションがいかにも終戦後の場末ムード。それでもいくらかは明るい男どもに較べ、苦虫を噛み潰し絶望感漂う肥った女達のなんと暗いことだろう。これらの秀逸なシーンが映画を引き立てる。
そんな場に、じわっと顔を出すのは戦争の悲劇。戦禍を被ってきた人達の姿だ。
主人公が住む四畳半ほどの屋根裏部屋は、頭が触れる様な斜めに走る梁の周りの壁一面にヌード写真がビッシリ貼られ、酒瓶が散乱した臭っさい空間。そこで展開される常軌を逸したアルコール依存とセックスと暴虐の限り。
戦争なんてもっと酷いことをやってると言わんばかりの暴力性は、チラッと出てくるフランクフルトソセージに象徴されるカットに帰着する。
面白い映画だ。一番怖いのは元将軍とかいう大男の存在だが、こいつは怖い。
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