グレース・オブ・ゴッド 告発の時のレビュー・感想・評価
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この監督には珍しい社会派映画
プレナ神父事件という実際にあった神父から少年への性的虐待事件を、3人のパートに分けて描いている。1人目の5人もの子供に恵まれたエリート銀行員アレクサンドルは、少年時代同じボーイスカウトにいた幼なじみからある時神父の性的虐待について聞かれ、突然当時をまざまざと思い出す。しかし既に時効となっており、どうすることもできなかったが、諦められず警察に告訴状を郵送する。それを受け取った警察は捜査を開始し、20年以上前に枢機卿あてに送られてきたある母親の手紙を発見し、連絡を取る。その当事者フランソワは兄とともにスカウトに入っていて、自分だけがいたずらを受けていた。フランソワはマスコミを使い、テレビや新聞の取材を受ける。その記事を見た女性が、同じ被害を受け未だにまともな社会生活が遅れていない息子エマニュエルに記事を見せる。彼らはまだ時効前だった。そうして3人をはじめ、被害者、証言者は集まった。神父は自分の性的志向をわかっていて、教会に告白していたという。神父が罪を認めても、教会側は神父を解雇しないし、責任も転嫁し合って認めない。一方で被害者の会の動きが活発化するにしたがって、バッシングが増え、またその当時すぐ近くにいた家族の心理も露になる。
どこかにフランソワ・オゾン風味がないものかと思ったが、それよりも真実を告発することに重きを置いたのかな。リヨンの街が舞台で、行ったことのある人には懐かしいかも(少ないと思うが)。
数こそ力
実際にあった神父による児童への性的虐待と、それを知りつつも動かなかった枢機卿に立ち向かった被害者の会の話。
現在も子供たちに教えを説いていることを知り、時効にはなっているものの、自身がこどもの頃に受けた虐待を教会に訴える男。
そして呆気ない程簡単に認める神父と、のらりくらりの枢機卿。
何年か前に神父と枢機卿が訴えられた事実のみは、知っていたけれど、そこに至る背景や、被害者の葛藤と告白が描かれており、自身の恥部と考えたり、相手が教会ということを考えたりして、なかなか他の被害者が声を上げない中、時効前の被害者が立ち上がり、話が広がっていく様子には引き込まれた。
けれど長い。
俺も俺もだったり、能書だったり、同じことを繰り返しみせられて正直途中で飽きてしまい、早く終われと。
エマニュエルの件辺りからほぼいらない。
90~100分ぐらいでまとめてくれたら良かったのに。
まだ、裁判が終わっていないのは知らなかった。
深く考えず観ました
こんなに重い内容とは知らずに観ました。まずもって長いです。2時間半程あります。物語に引き込まれれば時間は気にならないでしょうが、私は途中で「やけに長いな」と気付いてしまいました。お腹が空いたのも一因です。
重い内容ですが、まず最初に感じたのは「おおっフランスの家庭お洒落! イイなぁ、これが普通なのか?」でした。アレクサンドラはフランスでも中上流なんだろうなぁ。
その他、家にドラムセットがあって、夜中に叩きまくれる環境にも「フランスってこんな感じなのか?」なんて思いながら観てました。
肝心のテーマについては宗教観の違いの為か、私にはなかなか理解できない部分もありましたが、フランスでもこんなことが国のあちこちで起こっているわけでは無いのでは?と思いたいです。
最近の話で驚いた
割とよくある題材だと思いきや、被害者は20年経っても傷は癒されず問題は思いの外深い。この映画はいろんな事を提起している。被害者の心の安息、新しい被害者の抑止、神父の贖罪、時効の必要性、巨大な組織の浄化が可能か。しかも最近判決が出た実話に基づいている。
昔はリテラシーも低く、親に相談してもラチがあかず更に孤立してしまう人もいた。とても罪深い事だ。
話は主人公が入れ替わり進んでいく不思議な構成になっている。事実であればしかたないのだが後半のアレクサンドルの熱意の低下におけるモブ化が?という感じ。プレナの罪の認めることの潔さの意味もちょっと理解できなかった。教会に対して開き直りの態度だったのか?こうなっても枢機卿は処分できないと分かっての態度なのか。不快以外ない。
最後の主人公エマニュエルの役者の演技が素晴らしく彼のその後がとても気になった。
オゾンは、見る者を不安にさせる暴力性をもつ。それぞれの家族関係の描...
オゾンは、見る者を不安にさせる暴力性をもつ。それぞれの家族関係の描き方もよかった。本当にそうなんだろうけど、会のメンバーは少しそう状態で興味深かった。
【"沈黙の掟" 強大な権力を持つ"組織"が、長年に亘り隠蔽して来た事に戦慄する作品。】
- フランソワ・オゾン監督作品はストーリー展開が粗い事がある。
が今作品は、カトリック教会の小児性愛者、プレナ神父が幼き子供達へ長年に亘り、性的虐待を行った事実とそれを隠蔽し続けたバルバラン枢機卿及び関係者を大人になった被害者達が、苦悩しながらも糾弾する過程を丹念に描いている。
又、自己浄化機能を失っているカトリック教会自体も糾弾している作品である。
だが、カトリック教会の存在を否定するのではなく、教会を正しい”組織”として再生させたいという思いも汲み取れる作品である。
作品は3人の被害者の苦悩しながらも教会を告訴する過程を、リレー形式で描く。-
1.長年、幼き日々の哀しきトラウマに苦しんでいたアレクサンドラは、プレナ神父が赦しの言葉を告げなかった事と教会側の対応の遅さで重い腰を上げる。
-赦しを請わない彼の姿が、どこかの国の愚かしき組織とダブって見える・・。
"カトリック教会の神父の問題を解決する"という立場の老齢の女性の解決方法にも、脳内で”それで、終わりか!”と激しく突っ込む。-
2.被害者団体を立ち上げるフランソワも幼き頃の哀しい想い出が忘れられない。
-両親が信仰するカトリックの神父から性虐待を受けたら、激しいトラウマになるだろうし、両親に訴えても相手にされなければ・・。心の傷はいかほどのものだろう。-
3.エマニュエルは現在も、家族も持てず、まともな仕事にも付けない・・。ストレスが溜まると、激しく痙攣し、失神してしまう・・。父親とは、幼き日に実情を訴えたが、軽くあしらわれた事で不和状態。救いは母親が、且つてキチンと息子に寄り添わなかった事を深く後悔して、彼らの行動を支援する姿である。
-そんな彼らが意見や立場の違いを乗り越え、結束して行く様は勇気付けられる。
が、過去の出来事による、両親との不和、心に負った深い傷はそんなに簡単には癒されない・・-
-カトリック教会の社会的位置付けが絶対的な影響力を持つ風土では、あのような出来事は、”あってはならない”衝撃的な出来事なのだろう・・。
そうでなければ、アレクサンドラが最初に告訴してから、プレナ神父への裁きの時間の長さが理解出来ない。しかも、それはまだ、問題の端緒である。-
<そんな彼らが、幼き日のトラウマを乗り越えようとし、少しでも前に進もうとする姿が心に沁みると共に、"隠蔽体質"はどこの国、組織にでもあるのだなあ、と哀しい気持ちになってしまった作品。>
■蛇足
ジャーナリストサイドから、アメリカのカトリック教会の同様の事件を描いた作品に「スポットライト 世紀のスクープ」があります・・。
心の傷は簡単に癒えず
2時間半くらいあったのかな。実話ベースという事もあり、また被害者一人にスポットライトを当てるのではなく複数の被害者にスポットライトを当て負った傷、深い苦しみを丁寧に描いておりあっという間に時間が過ぎとても見応えのある作品に感じた。
宗教団体が国の一つの省庁となりそこの汚職と戦うのはやはり並大抵の事ではない。いろんなしがらみから加害者を守ろうと働き、それがかえって被害者達をさらに苦しみ未来を不安にし暗くする。
今作で描かれていた被害者達も何度も挫折をした。しかし被害者同士が交流し、互いに意見を交換し合い時間を共にする事で戦う姿勢、火を消す事なく戦い続ける事ができたのではないか。
このあたりの戦う描写は非常に心に響くものはあった。
この事件は加害者の神父を罰することはできたものの、組織自体を罰することは現時点ではできていない事がエンドロールで伝えられた。
ただ彼らが動いた事で、これ以上の加害者を生む事への防止、そして時効の引き延ばす事は成功した。これはこれから生きる若い者達の未来へ大きく貢献したわけだ。
では加害者達の心の傷は癒える事ができたのか。残念ながらこの作品だけではそれは分からない。少なからず動く前、そして動く事なく真実を闇に葬る事に比べたらいくらか傷は癒えたのかもしれないが、完全に癒えることはないように思える。
加害者の神父はその時の出来心のような発言をしていたが、加害者にとっては一時の行動にすぎなくても傷つけられたものは、そしてその家族は生涯におってその傷と付き合っていかなくてはならなくなる。
また人の心の傷とはなかなか理解しにくいものである。
家族ですらそれが分からず、我慢を強いたり、この作品内でもあったように「何で今更告発を?」なんていった言葉が出たりしてしまう。
それはもちろん仕方のない事かも知れない。人の心の傷なんてものは十分に理解できる方が数少ない事であろう。だから大切なのは人を傷つけない、そして時には傷つけないように守ってあげる事が大切になってくるのであろう。
そういう気持ちが時として周囲に傷ついたものが現れた時、少しは理解する事に繋がるのではないかと思う。
昨今で言えばネット上の誹謗中傷なんかも同じ事が言えるのではないか。
この作品を見て改めて人を傷つけない事、そして相手を思いやる事へのを大切さを感じ、そしてそれ以上に自分が傷つかない事の大切さも感じさせてもらった。
人の心は思ってるいるよりも脆いものである。人を優しくし傷つけない事は当たり前だが、自分のことも大切にしないと簡単に心は壊れ人生を奪われてしまう。
人の心の大切さを改めて考えさせてくれる、そんな作品だった。
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