「起伏」“隠れビッチ”やってました。 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
起伏
タイトルからは想像もつかなかった着地を見せる本作。一筋縄ではいかなかった。
気楽に見れるコメディかと思いきや…なかなかに根深い内容だった。
全ての人がそうだとは言い難いが、それでもこのパターンはきっとあり得る。
最初は捻れた承認欲求の話かと思って見てた。自身を確立する為に他人を使う。
それが告白だったりSEXだったり。
その辺りの開き直り具合は生々しい。
女性2人は熱演であった。
「必要とされる人でありたい」
その必要性を相手になすり付けるような自負勝手さに現代の息苦しさを垣間見る。
恋愛のすったもんだに終始するかと思われた本作は、中盤以降ガラッと雰囲気が変わる。
主人公の過去が覆い被さってくる。
幼い頃、父親から受けた虐待の傷痕がジュクジュクと疼き出す。
彼女は愛情の対価を相手に求め、不安ゆえなのか、失望ゆえなのか、相手を責める。
心理的にも物理的にも。いわゆる家庭内DVってやつだ。
冷却期間を経た後、幸運にも彼女は良き理解者である彼とよりを戻す。
住み慣れた家を後にし、同居人達に別れを告げる彼女は一生懸命手を振り「頑張れよ、頑張るんだぞー」と叫び続けた。
彼女は異臭を放つ泥沼から救い出されたのだ。
…と、ここで終わっておけばいいのだが、この作品はそんないい子ちゃんじゃなかった。
救い出した彼は「僕も同じだから」と言い放つ。
ゾワッ…身の毛がよだった。
克服し乗り越えたのならいいのだけれど、どうなの?まだその片鱗は顔を出すの?ここに来て森山氏がキャスティングされた意味を知る。やらかしそうで怖いのだ!
収束しつつある物語が新たな支流を見つけ濁流の如く流れだそうとしたかのようだった。
そんな感想に至ったのも偏に主演・佐久間由衣さんの引力かと思う。
本作は佐久間由衣劇場と言ってもいいくらい佐久間さんの色んな表情が見れる。物語の起伏を一手に請け負っているのだから当たり前と言えば当たり前なのだが…。でも、だからこそ、核となる彼女に飽きてしまえば、脚本がどんなにうねってようと客的には凪いだ海に浮かんでるのと変わらずで、見ていられなくなる。
そおいった意味では佐久間さんは素晴らしかったし、監督とキャスティングには感謝しかない。
虹郎氏の貫禄には驚いたし、もう1人のヒロインも、とても美しいのだけれど薄幸というかガラスというか…この方も見事だった。
主要なキャスティングがハマりにハマってたと思う。
良い作品に出会えた。
エンドロール後のおまけに関しては…あれはホントにおまけなんだと思う。
監督達の遊び心を見たような気がした。
そんなおまけ映像も含め、一筋縄ではいかない作品だった。